ハルヒ

□月夜にティータイム
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 携帯が鳴っている。

 風呂上がりで濡れた髪をタオルでごしごし拭きながら、古泉はディスプレイに表示された発信者をみた。

『朝比奈みくる』

 無機質に映し出されたその名前を確認し、一つ咳払いをしてから彼は電話に出た。
「もしもし」
『あ、こんばんは。』
「こんばんは。どうしましたか?」
『あの、古泉くんにちょっと相談が…』
「相談?」
『はい、その…キョンくんのことで』
「…今どこにいますか?」
『へ?家、ですけど…』
「わかりました、すぐ行きます。」
『ふぇ!?い、いいです!電話でだいじょ』
「こちらの都合です。では。」
 一方的に電話を切って彼はため息をついた。『機関』に聞かれているやも知れない電話で“彼”についての話をするわけにはいかない。ならば朝比奈みくるの家の方が安全というものだ。
濡れた髪をドライヤーで一気に乾かし、ラフな格好に着替えて家を出た。彼女の家は割と近いところにある。前に2人で“探索”をしたときに教わった家を目指して古泉は自転車を漕いだ。

 インターホンを押して短く名前を告げる。どうぞ、という声とともにドアが開いた。長く柔らかい髪は後ろで一つにまとめられて、淡い色の部屋着を着ている。ショートパンツから白い脚がのびていた。
「わざわざごめんなさい…」
「いえ、こちらこそ押しかけてしまってすみません。不都合があったもので。」
言いながら古泉は中に通される。あまり履かないスニーカーを脱ぎながらお邪魔します、と言うと、彼女はいらっしゃいと小さく笑った。
部屋にあがるとやはり中は少女らしい可愛らしい雑貨や家具で溢れていた。小さな白い丸テーブルの前に座ると、彼女はてくてくとキッチンから紅茶のポットを持って戻ってきた。よいしょ、とつぶやいて腰掛けると、これまた可愛らしいティーカップに甘い香りの紅茶を注いだ。
「ありがとうございます。」
「お口に合うかわからないけど…」
「美味しいですよ。」
一口飲んだ古泉がそう伝えると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「そういえば…Tシャツにパーカーなんて珍しいですね。」
紅茶を飲みながらみくるは不思議そうに首を傾げる。
「えぇ、まぁ…風呂上がりだったもので。」
「あ!ご、ごめんなさい…!」
慌てて謝る彼女に、いいんですよ、と微笑んでから、彼は真剣な表情をした。
「それで、本題は?」
「あぁ、そうですよね。」
こほん、と咳払いをして居住まいを直した彼女は真面目な顔をして喋り始めた。






 時計を見ると22時を回っていた。2時間くらい話していたらしい。彼女は満足げで不安そうな表情を終始崩すことなく古泉の話を聞いて、ぽつりぽつりと質問をした。
「そろそろ帰ります。」
古泉がそう言うと、みくるは口を開いて寂しそうな表情をした。
「そうですよね、引き止めてごめんなさい…。」
彼女は立ち上がり古泉の隣に並ぶと玄関に向かった。その間も、あの、とか、えっと、とか何かを言い掛けてはやめる、を繰り返す。
「あの、古泉く」
「どうしたんですか?」
「いや、あの、えっと…」
なんでもないです、と首を振って、彼女は俯いた。古泉はスニーカーを履くとみくるに向き直って頭を下げた。
「それでは、おじゃましました。」
夜遅くまですみません、と古泉。
「ふふ、泊まっていってもいいんですよ?」
「遠慮しておきます。どうにかなってしまいそうだ。」
みくるが冗談っぽく言うと、彼は笑った。
「では、おやすみなさい。」
「気をつけて。」
ドアを開けて出て行く古泉の背中に、みくるは小さくつぶやいた。

「お話出来て嬉しかったです。」





(ほんとは全部口実、でした)






――――――――――

初古みく〜
みくるん片想い話でした!
最後まで片鱗ないけど!
甘くもないけど!←

お互い1人暮らしで家近くて
夜行ったりしてたら萌えます




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