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□逃げてお姫様!
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始まりは鴇時だった。ただ暇という理由で梵天を呼び、更に露草を呼んだ。
寝ていた所で呼び出された為、不機嫌そうな表情だった。呼んだ本人は面白そうに笑っていた。
今すぐ殴って寝たい衝動に駆られるが突然走り出したので行えず、更にはそれを煽るような言葉が飛ぶ。

 「俺を捕まえたら寝てもいいよ〜?それとも、俺に捕まって気絶させられたい?」
 「…いい度胸じゃないか…いいよ、俺が捕まえてあげるから。さっさと捕まえて一発殴らないと」
 「そんな酷い事言うなら全力で逃げちゃうよ〜」
 「なっ!!」

いつの間にか鴇時との差が大きく広がり、彼の姿が小さくなっていた。
逃げるのだけは早いな、露草の呟きが梵天の耳に届いていた。

 「六合の…俺が捕まえられないと分かってる…眠い……」
 「おい!そのまま寝たら襲われんぞ!」
 「諦めたくなる……ふぁぁ…眠い、六合の馬鹿」
 「梵天ー!そこで寝ないで追い駆けてよー!俺すっごい暇で面白くないよー!」
 「うるさいね!俺の眠りを妨げたくせに…」
 「ふらついてんぞ、梵天」

眠いのか梵天の体が傾いた、それに驚き露草が急いで支える。
すぐにでも寝てしまいそうな程目が虚ろで危なっかしいと思えた。
恨めしそうに遠くにいる鴇時を見つめている梵天は既に追い駆ける気が失せている。

 「追い駆けても、どうせ襲われるだけだと思うしね…もう寝てもいいかもしれない」
 「現実逃避してんじゃねぇよ」
 「篠ノ女〜梵天が追い駆けてこない〜」
 「ん?なら、お前が追って捕獲すれば早いんじゃないか?」

いつからそこにいた。何故か紺が鴇時の隣にいたのか、露草には分からなかった。
だが、変な事を教えている事は確かで。ニヤニヤ笑いながら梵天を見ているから分かるのだ。
突然紺の手を掴んで何か言っていたが、その後すぐに戻ってきた。
あくどい笑みを浮かべている鴇時に梵天は一瞬寒気を感じていた。

 「追い駆けないなら、俺が梵天を追い駆けてあげるよ」
 「何か企んでるな、六合の」
 「い〜や〜?梵天が動かないから、追い駆けて動かそうかな〜なんて♪」
 「そんな事は露草に頼みなよ、俺は断るからね」

諦めずに誘うが全然構ってもらえてない鴇時、露草を誘おうとしない。
どうしても梵天を追い駆けたいらしく、服を掴んで強請りだす。
子供と思いながらも、彼だけには甘い梵天が先に折れた。

 「…もういい、逃げてもいいよ」
 「梵天!?」
 「わーい!やったー!じゃあ、十秒数えるからね」
 「露草」
 「ただ人を使いたかっただけかよ、ったく」

数え出す前に露草が梵天を抱え、勢いよく走り出す。
まさか露草が抱えて逃げるとは思っていなかったのか、鴇時は目を見開いた。
反則とは言わないらしい、梵天の期限を損ねたくないだけだった。

 「数え終わったら追い駆けるよ〜」
 「お前に追い付く自信があるようだね、六合のは」
 「さぁな、俺に追い付けるかは走りを見てから分かるだろ」
 「…もし逃げ切ったら、一日だけずっといてやっていいよ」
 「なら、全力で逃げないとな」

使われるのは気に食わないが、条件があるのなら話は別。
更に梵天が自分自身を賭けているのだ。乗らない方が損をするだろう。
あいつには絶対に渡さねぇよ!一人決意を決めた。

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