草雲

□ハロウィン
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「草壁」

突然にかけられた声にびくりと肩がゆれた

「Trick or treat」

静かに告げられたそれ

きっと、今朝沢田綱吉達が行っていた一連の流れを見ていたのだろう


「雲雀さん、学校にお菓子持ってくるのは校則…」


目の前にあらわれた雲雀に言葉がつまる


「つまり、くれないんだよね?」


その言葉で気付かされた

わざとだ


「覚悟はできているよね…?」


日常稀に見る満面の笑みで自慢のリーゼントを握り潰す様は天使の顔をした悪魔かと言うほどだ


「静かにしてないと…咬み殺すよ…?」


「ひぃっ」

こうなってしまえば逆らうことなんて出来ない訳で


「…。」


「?なに…」


雲雀の"イタズラ"だ。並大抵の人間が考えるような事ではないので、死を確固のうえじっとしていた

だがやってきたのは頭への多少の違和感


「やっぱり邪魔だね」


そういうと、どこから持ってきたのか、巨大な鋏を手にしている

"邪魔"と言って鋏といえば…


「リーゼントだけは勘弁してくださいっ!!」


立派な大人になれるようにと日々念入りに仕上げているこのリーゼント

これが無かったら下の奴らに示しがつかないではないか

人は抵抗されれば"イタズラ心"をくすぐられるのであり


「フッ。そういっても僕は止められないよ」


唯一のこだわりを守ろうとする草壁は雲雀の人並み外れた鋏さばきに劣らぬ動きでリーゼントを守っている

(くっこのままではリーゼントがっ)


スキをつくといってもスキが出来るような人ではない

そうなれば



「き、恭さんっ!」


普段めったに使わない呼び名で呼んでみれば、思ったよりも効果があったみたいで、動きが止まる


「恭さん、顔真っ赤ですぜ?」

「う、うるさいよ」


照れ隠しにと、また鋏を振り回すが、これは全く力が入っていないために容易く受けとめられた


鋏を取り上げ、仕返しにと


「Trick or treat」


にっこりと笑い、雲雀にそう告げる

するとまだ赤み掛かった顔でにやりと微笑む


「僕が何も持っていないとでも思った?」


ずいっと顔が近づいたと思えば、わずかに触れるほどだけれど、確かに伝わった熱


「どんなtreatよりも甘くておいしいでしょ?」




END

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