3

□お前が俺に惚れてから、な
1ページ/1ページ

真選組の女中を始めて約2年。
いつからだったか、視線を感じるようになった。
ある特定の人からのみ、だけど。


快晴の空を見上げつつ洗濯物を干していれば、背中から視線を感じた。

誰、なんて聞かずにわかってしまう自分に少しため息。

本当にいつからだった?
何の接点もないはずの、しかもあまり話すらした事のないあなたから視線を感じるようになったのは…。

一向に離れる気配のないそれに、ゆっくりと私は振り返った。


「っ、」


そこにいたのは予想通りの人。
でも、予想を遥かに越えていたのは、その熱の籠った瞳。


「よお」
「お、はようございます…」


煙草をくわえながらこちらに一歩ずつ近づく人、土方さんは反らす事なく私を見る。


「あ、の、」
「あ?」
「何か、ご用、ですか?」
「…」


思案する顔をし再び目線がこちらへ来た時、心臓がドクリと鳴り響いた。


「お前に、会いに来た」
「っ!?」


伸ばされた手は躊躇なく私の頬に触れ、滑るように撫でる。

なんて…、なんて触り方をするんだろう…。

言葉で言われたわけではないのに、何故か「愛している」と言われているようだった。


「あっ、の…っ」
「今日は、」
「っ、土、方さっ」
「いい1日になりそうだ」


触れた手はそのままに、にやりと笑いあの熱のある瞳を向けられる。


ああ、何とも思ってなかったはずなのに…。
こんな感情持つはずないって思ってたのに…。


「まだ言わねえ」
「えっ、」
「薄々は気付いてるだろうが、俺はまだ言わねえ」
「あ、の、」
「もう少し」


お前が俺に惚れてから、な




耳元まで顔を寄せられ、吐息と共に出された言葉に、私の頭は完全に真っ白になってしまった。


「覚悟しとけよ?」




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ