企画室
□フル投球のチョコレート
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ギュッと握り絞めた甘い甘いそれ。
受け取ってもらえないのは百も承知。
大体自分がそんな柄ではない事も。
だけど、今日くらい少し乙女思考になってもいいじゃないか。
少しの意気込みと多大なる勇気を振り絞って大きく一つ深呼吸。
目の前にある戸がまるで鉄の壁のように大きく感じてしまうのはきっと中に人への思いを告げる事に躊躇しているから。
関係は壊したくない、でも先に進まなければならないのだ。
私も、彼も・・・。
「副長、今よろしいですか?」
緊張している事が微塵にもバレてはいけない。
「ああ、入れ」
震える体に叱咤する。
「・・・、失礼します」
戸を開ければ、机に向かい書類整理をしている副長。
こちらをちらりとも見やしない。
「用件はなんだ?」
どんな反応されたって伝えると決めたはずなのに、いざその時が来ると言葉が出て来ない。
どうしよう。
どう、しよう・・・・。
「・・・?おい・・・っ!?」
「好きだばあか!!!!!」
あろう事か私は今までの決意やらなんやらを全て台無しにし、副長にチョコを投げつけて逃走してしまった。
バカは私だあああああああ!!!
もう無理!!
もう会えない!!!!
フル投球のチョコレート
あいつが去って行った後、自分に投げられたそれを拾う。
やり方はどうであれ、やっと言って来やがったあいつに緩む頬は抑えられなくて。
「ばーか、ちゃんと向かい合って言うもんだろうが」
悪態を突きながらも、明日あいつにあった時の事を考えて笑っている俺がいた。
なあおい、返事ってのは最後にちゃんと聞くもんなんだ。
言い聞かせてやろう。
説教と、極上にクサい甘い言葉で。