・・現代パロ・・
□■コンビニで会いましょう■
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別になんて事無い存在だった。
よく来る常連客の一人で。
いつも同じ時間に、同じ物を買いに来る。
そいつが来ると
「あー11時だ。」
と思う程度の存在だった。
ハズ…なのに。
いつからなのかわからないが。
あの日。
声をかけたくなった。
多分、バレンタインデーなんて浮かれた日にバイトなんかしている自分が少し虚しくなったのかもしれない。
だから同じ仲間と思えるいつもと同じ行動のその男に。
声をかけてみたくなったのだろう。
「毎日同じ物食って、飽きませんか?」
無意識にそう口から零れた問い。
俺の言葉を聞いたその男は困ったような顔をした。
「飽きた。」
そして、一言そう言うとふわりと微笑んだ。
その顔を見た時。
俺の中で何かが弾けた。
頭が真っ白になったのに。
顔は真っ赤だった。
まるで………。
「っしゃいやせぇー…」
コンビニエンスストアの店内に客が入って来た事を知らせるピロンピロンという軽い音。
その軽さに負けず劣らず軽い口調でお決まりのフレーズを口にする。
ただ、本来の感謝の気持ちを込めた『いらっしゃいませ』ではなく、決まりだから仕方なく言ってる感満載のげたるさを持った言い方だ。
形式上言わなきゃいけないから言うだけで感謝の念など一欠けらも持ち合わせて居ない。
だって、バイトだから。
銀時はレジの横に設けられた狭いスペースに椅子を置き、携帯をいじりながらだるそうに座る。
深夜番のシフトばかりの自分にやる気など更々無い。
時刻はまだ10時30分。
出勤してからまだ30分しか経ってないのだ。
今から張り切ったのでは朝まで持たない。
まぁ、いつのシフトに入ったとしてもやる気など出す気も無いのだが。
挨拶さえ済ませば後は客がレジに商品を持ってくるまでは携帯をいじる時間。
商品の搬入は夜中だし、それまではただレジをこなすだけの時間なのだ。
「あ、ちきしょ。またバケかよ…。」
もっぱら携帯でゲームをダウンロードしては時間潰し。
最近はスロットがお気に入りだ。
「…すいません。」
「あ、はーい。」
客が来たら中断、そしてレジを打つ。
「ありがとうございやしたぁー。」
そしてまたやる気の無い声でお見送りを済ませたら椅子に座り、携帯を手にする。
毎日、毎日、同じ繰り返しの時間に不満は無い。
平和と退屈は隣り合わせなものだからそれはそれで幸せなのだから。
そう思う反面、刺激の無い生活にうんざりしているのも事実。
俺はいつまで同じ事を繰り返すんだ?
なんて、自問自答してみる瞬間も無くは無い。
だが、新たな行動を起こすような気力も無い。
だから、毎日同じ事を繰り返すのだ。