・・金黒・・

□●愛シテ●2ndcontact
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『誰か』に見付けて欲しい。



『誰か』に傍に居て欲しい。



そう思っていた頃は。



それでも苦しんでいた。



でも今はそれさえも幸福だったんだとわかった。



だって、『誰か』でよかった。



『誰でも』よかった。



傍に居てくれるのが、『誰か』で満足出来たから。



なのに、今は駄目だ。



『誰か』じゃ駄目だ。



見付けて欲しいのも。



傍に居て欲しいのも。




たった一人だけ。



どうして手に入らないものばかり欲しがるのだろう。




愛してなど貰えないのに。









「いっ、居候ォォ!?」



社員達で賑わう社員食堂に、一際大きな声が響き渡る。

雑談を楽しんでいたいろんな部署の社員達が、その声に一斉にこちらに振り返った。


大きな声をあげたせいで無駄な注目を浴びてしまった近藤は、周りに愛想笑いを振り撒いてペコペコと頭を下げる。


同じ席の土方はその光景に目の前のカレーを食べる気が削がれて、スプーンを皿に戻した。



「なんでトシが知らない男なんか居候させてんの!?有り得なくねー!?」



今度は少し抑え目のトーンで話を進める。


近藤は食べかけのハンバーグ定食を口に頬張りながらも、土方に詰め寄って来た。

ただ、ご飯の粒がこっちに飛んでくるのだけは勘弁してもらえないだろうか。



「成り行きみたいなモンだ。まぁ怪我人を無下にも出来ねぇし怪我が治るまでだけどな。」



食べる気の無くなったカレー皿をテーブルの端に寄せて、土方は小さなため息と共に呟く。



煙草を吸いたい所だが、此処は禁煙。


出来る事なら早く喫煙所に向かいたいが、そうはいかない。



近藤の早食いは知っているから待ったとしても、ものの二、三分だ。



「へぇートシがねぇ……。お前何気に人見知りのクセになぁ。」



近藤はハンバーグ定食をあっという間に平らげると、笑顔で土方に呟く。



この会社に入って知り合った近藤は、先輩でありながらかなり気さくな人物で、近藤の言う通り人見知りな自分でもすぐに打ち解ける事が出来た貴重な友人だ。


土方のヘビースモーカーぶりも熟知している近藤は、食べ終わるとさっさとトレイを片付けに向かう。



土方もその後を追った。






「傷だらけの金髪ホストか!なーんか、あまりにもトシと違い過ぎておもしれーな!」



喫煙所に移動してからも、さっきの話は続いていたが近藤はもう楽しそうだ。



ヘンな奴じゃないか、とか。



悪い事をするんじゃないか、とか。




そんな疑いを一切持たない近藤。



この人にアイツが居候を申し出たら二つ返事で了解が貰えただろう。



殴られる事も、蹴られる事も。



振り返したくない傷の話も。



何もしないで済んだんだろう。



土方は自分達しか居ない喫煙所で、ゆっくりと煙草を肺に吸い込ませる。




アイツは一日。



あの部屋で何をしているんだろう。



家政婦とはいっても、一日にやらなければならない家事は無限じゃない。



一日中部屋に居ればやる事だって無くなるだろう。



昼寝でもしているだろうか。



あの広いダブルベットに。




一人で。




別に今まで自分だって一人で寝ていたのだから当たり前の事なのに。


どうにも俺はアイツに甘いらしい。


きっと、昨日の話を聞いたからだ。



まだ『捨て犬と俺の物語』を引きずっているらしい。



馬鹿馬鹿しい。



たった一日なのに。



随分と侵食されている。




あんな、ダメホストに。





「たでーま帰りやしたァ。」



喫煙所の仕切りからひょっこりと顔を出し、二人に声をかけてきたのは沖田。


近藤と同じく、この会社で知り合った後輩。

元々、近藤の大学時代の後輩らしく近藤とは別の意味でだが、すぐに打ち解けた人物だ。



どうにも俺が憎たらしいらしい。


理由は、わかってる。



「お疲れ、総悟!どうだった?」


外回りの営業に出ていた沖田は、暑苦しいらしいネクタイを緩めながら喫煙所に入ってくる。

土方以外は喫煙者では無いが、土方がかなりの頻度で煙草を吸いにくる為、当たり前のように此処が自分達の集合場所になっている。



「ちょろいモンでさァ。部長様様から契約頂いてきやしたぜィ。不景気のご時世こそ接待が効きやすねィ。」



近藤の問いに沖田は、余裕だとばかりに得意げに笑った。




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