・・短編弐・・

□◆会いたかった◆
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息が、詰まりそうな時。


何かに、つまづいた時。


何処か、苦しい時。



人を、殺した時。



どうしようもなく、アイツに会いたくなる。


これは甘えなのだろうか。


だとしたら、とんだ醜態だ。


俺が甘える、だなんて。



気色悪いったらねぇよな。





ガタッ



「…………ん?」



深夜。


普段ならばこの時間に起きている事は無いのだが、なんだか妙に喉が渇いて目が覚めた。

これは糖尿予備軍の症状かと多少自分に焦りを感じながら、のろりと布団から這い出て冷蔵庫の扉に手をかけようとした時。


玄関のガラス戸に物音がした。


そこにゆらりと黒い人影が映る。



なんとなく、な予感。


多分それは当たっている。



玄関まで歩いて行きゆっくりと戸を開いていくと、予感通りの人物が意外な風体でそこに居た。



「おーおー、どうしたよお前」



玄関のガラスを背に両足を投げ出して座っている土方の姿。

此所に来る時は大抵着替えてくるのに、その態は隊服のままだった。


プラス、酒の香り。



座り込んでいる土方の肩を揺すり、銀時は声をかける。

夜中だという事をふまえて声は小さめだ。



「……起きてたのか」



こちらに顔も向けないで土方はぼそりと呟く。

微かに不満が臭う口調だ。



「目が覚めただけだ。つーか、起きてなかったらどうするつもりだったんだお前」



座り込んだままの土方の隣に腰を落として銀時は苦笑いを浮かべる。

そして見つめた先の土方の横顔に、何か黒い陰がかかっているように見えた。


不意に、ざわつく空気。



「……何かあったのか?」



いつもこの男が持つ雰囲気は決して穏やかなものでは無いけれど、二人しか居ない時はそれほど重みは感じなかった。


でも、今は違う。



銀時の問いに、土方はゆっくりと顔をこちらに向ける。

そして、軽く微笑むと唇を重ねてきた。



軽い酒の味と僅かな血の味。


絡ませる舌に微量の火薬の匂いがついてくる。



それを感じ取った銀時は、静かに目を閉じて更に深く唇を重ねていった。


貪るように何度も角度を変えて舌を奪い合えば、その度にガラスがガシャリと音をたてる。



銀時は土方の体を強く引き、玄関の中に雪崩れ込ませた。


冷たい床を背にした土方は、小さく身震いする。



「ちっと、辛抱な」



下から見上げてくる土方に一言漏らすと、銀時はそのまま唇を土方の体に這わせた。


耳に首筋に。


少し乱暴気味に肌を侵していく。



「……ッ、…」



土方は声を殺すように顔を歪めているが、抵抗するつもりは無いようだ。


これを、此処で受け入れるつもりらしい。



――誤魔化されてやるよ。



銀時は心の中で囁いた後、土方の衣服を解きその肌を自分のものにしていった。


冷えた空間に、熱を帯びた空気が増していく。



心まで。



熱が伝わるように、と。





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