・・短編弐・・
□共犯者
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拍手御礼文(七万打企画ヨリ)
高土同級生パロ 1/2
【共犯者】
秘密。
秘密。
隠して、分け合って、内緒の話。
それは俺だから?お前だから?
他の誰か、でもよかった?
わからない。
だからまだ、この感情は秘密。
そろそろ湿気が薄れて、爽やかというか乾いた風になりつつある秋口。
騒がしく賑やかな校内を避けて、普段立入禁止になっている屋上のドアを押し開ける。
鍵はかかっているのだが、実際古すぎる鍵は錆が酷く、実は持ち上げるように押せばなんなく開いてしまう。
それを知ったのは高二の春。
それからというもの、土方が煙草を吸う場所は屋上と決まったのだ。
ゴトンという重苦しい音でドアが閉まると、高層独特の景色が広がっているアスファルトの上を歩く。
これだけ開放的なのに、入口からの死角になる隅に体を落ち着かせたくなるのは、疚しい事をしてるという自覚があるからだろう。
フェンスに足をかけて弾みをつければ飛び乗れる一段高い高台。
下から見れば時計がついている場所の裏手だ。
そんな狭い薄暗い空間に空き缶とライターがチラリと見える。
いつもの場所。
そして。
「またテメェか……」
いつも、の同席者。
長い前髪は片目が隠れてしまう程で、お世辞にも愛想がいいとは言えない風貌だが、見た目だけは格好のいい男。
口を開いても協調性のカケラも無い。
「……こっちの台詞だ」
高杉晋助が居た。
お互いの存在に文句を言いつつ、お互いが座る分の幅は空けているのが妙な感じだ。
別に他にも吸う場所はあるのだが、バレ無い&臭いがつかない&開放感などなど。
この場所を譲りたくない理由は多々あって、此処に来る事を互いに止めようとはしない。
そのうち生まれる『何か』
何故だか感じる『特別感』
だが、それを掘り返そうとか原因究明しようなどとは思わない。
何故なら、自分だけがそう感じているだなんて、なんだか負けたような気分になるからだ。
なんだかんだ文句を言いつつ、高杉の隣に腰を下ろす。
汚れたアスファルト作りの床に尻も背中も押し付ければ、ひんやりとした冷たさが伝わって気持ち良い。
「……、ん?」
ポケットに忍ばせたソフトケースの煙草を取り出し、いつも灰皿代わりの空き缶と共に置きっぱなしライターで火をつける。
と、行きたい所なのに何度石を擦っても火がつかない。
ライターの半透明の中身を覗けば、液体の一滴も無い程にカラカラだった。
「……ッチ、くそ……」
土方が盛大に舌打ちをして、ライターを灰皿にしている空き缶に投げると、隣で何本目かの煙草をふかしていた高杉が土方に視線を向ける。
灰皿に沈められたライターと、火がついていない煙草をくわえている土方を見れば、状況判断は容易だった。
「……火、いるか?」
「……あ?」
高杉の低く甘い声が流れてきて、土方は訝しげな苦い顔になる。
まさか、あの高杉がそんな気遣いを見せるとは微塵にも思って無かったからだ。
「……火、あんのかよ……」
高杉もこのライターを使っていたのを知っているから、別のライターを持ってきているなんて珍しく用意がいいな、なんて思って。
火のついていない煙草を口にくわえたまま振り向くと、目の前にはありえない近さの高杉の顔があった。
「……!」
言葉を失い固まった土方など気にもせず、高杉は火のついた自分の煙草の先を土方の煙草に押し付ける。
火の先を固定する為だろう。
高杉の手が土方の首に伸びてきて、襟足あたりに添えられた。
何故か、呼吸が止まった。
驚きとかは違う何かに、息が止まってしまったのだ。
「……何固まってんだ、お前。」
そんな土方を嘲笑うようにニヤリと笑う高杉。
こんな火の貰い方なんか普通、野郎同士でなんかしない。
そんな言い訳を口にしてみたいけれど、動揺を肯定してしまう発言をする方が負けだと思った。
「キスされんのかと思った」
軽く笑いながら余裕そうにそんな事を言ってみる。
この発言に対して、いつも涼しい顔をしていやがる高杉の表情が、僅かにでも変化したら勝ちだなんて思ったり。
てか、勝ち負けばかり気にしてるのは何でだろうかとか自分に問うてみたり。
とにかく、高杉という男の隣に居る時はなんだかずっとこの男の事ばかり考えてしまう自分が居て。
それが何故なのか、は突き詰めたくない気分だった。
拍手御礼文2に続く→→→→→