・・短編・・
□◆他が為、自分の為◆
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人間、結局は皆、自分の為に動くんだ。
他人の為に動くなんて早々無いんだろう。
命には関わらないけど、
助けて欲しい時に。
その願いが叶わないと。
やっぱり悲しかったり、虚しかったりするわけで。
ねぇ?人間みんな弱いじゃん?
「…3…いや5枚!あ、いや…やっぱり…」
「お兄さん、いい加減にしてくれよー。結局、何枚買うの?」
宝くじ売り場でもたもたと買う枚数を迷っている男が居る。
財布にある残り少ない金と睨めっこをしては、希望枚数をコロコロ変えている。
「銀ちゃん、情けないアル。男ならすぱーんっと全財産を夢に注ぎ込むんだっ!夢にかける生き様こそ男のロマンだ!!」
窓口でうだうだしている銀時に痺れを切らした神楽が宝くじにかける思いを叫ぶ。
「神楽ちゃん。今、夢に賭けて大負けした俺に随分なはっぱをかけてくれるじゃねーの。」
さっきまでイベントだと、朝から並んでまで行ったパチンコ屋で大負けした銀時は荒んだ顔で神楽を見る。
パチンコで負けたのに、今度は宝くじでまだ楽して金を得る奇跡を求めている奴に神様が笑いかけるとは思えないが。
「何情けない事を言ってるアルか!男はやる時はやる!損したっていいじゃないか!だってそこに一筋の希望が有る限り…やったぜ…父ちゃん…!!」
神楽は何故か有名な野球漫画の主人公のような台詞を吐き、陶酔している。
銀時は頭をかきながら、ため息を吐いた。
「で、お兄さん、どうするの?何枚にするの?」
後ろ詰まってんだけど、と売り場の窓口の店員が言う。
よく見れば神楽のせいもあり、人だかりが出来ている。
「…5枚で…ちょ、当たりそうなの選べよ!まぢ切羽詰まってんだからさ!」
「当たりそうなのが解ってたら今頃、俺はこんな所でバイトしてねーっすよ。はい、5枚ねー1000円。」
必死な銀時の訴えに面倒臭そうに店員は上からただ取ったスクラッチを5枚出してきた。
まぁ、店員の言う事はもっともだ。
俺だってわからったらこんな淋しい財布に嘆いたりしてない。
銀時は泣く泣く財布から1000円を取り出し、店員に渡した。
「銀ちゃん、それ何アルか?『サマージャンボ大江戸宝くじ』じゃないのか?」
銀時が手にした小さい紙を不思議そうに見つめる神楽。
一等2億円の宝くじを買うものだと思っていたらしい。