・・短編・・
□◆−隣−Side沖田◆
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あぁ、面倒臭せぇ。
目を覚ますと同時に怒鳴り声が聞こえてくる。
毎朝これだ。
いい加減、この目覚ましにはうんざりする。
これが機械の目覚まし時計のアラーム音ならば、確実に叩き斬って粉砕してやるのに。
忌ま忌ましい程に頑丈に出来たあの目覚ましは何度狙ったって生きている。
本当に殺す事が出来ない事が一番忌ま忌ましい。
「総悟!!テメェ聞こえてんだろーが!!いい加減起きて来いっ!!!」
沖田の部屋の障子が抜けるのでは無いかと思う程の勢いで、目覚まし時計ならぬ、土方が怒鳴りこんできた。
−−あぁ、うぜぇなァ…。
起床時間を過ぎている身分で文句は言えないのだが、毎朝こうではうんざりもする。
もう少し、普通に起こせないものなのだろうか。
沖田はため息を吐いて、むくりと布団から起き上がった。
「毎朝、毎朝ご苦労ですねィ土方さん。低血圧でデリケートな若者ですいやせん。」
沖田がまったく悪びれも無く、嫌味を込めた口調で部屋の前で仁王立ちをしている土方を一瞥する。
「だらしねぇお前には心底うんざりするぜ。お前がそんなんだから一番隊は動きがだらけるんだ。起床時間より早く起きる癖をつけろ。」
土方はくわえ煙草で苛々した表情で沖田を睨む。
沖田は怠そうに布団から出て、ゆっくりと伸びをした。
「ジジイは早起きが得意ですからねィ。仕事には支障をきたして無いんですから文句言われたかぁ無ぇですよ。」
欠伸をしながら面倒臭そうに話すわりにはしっかりと反論する所が沖田らしい。
頭の回転がいいのだ。
−−誰が低血圧だ、くそガキが…。
土方は障子に寄り掛かりながら煙草の煙を吐き出し、沖田を睨みつける。
そんな土方には目もくれず、沖田は着物の帯を外し、ハンガーにかけてある隊服に手を伸ばした。
まだ自分を睨みつけている土方の視線に気付いて、ため息を吐いた後、視線を土方に向けた。
「…なんだ。」
冷たい視線を向けられた土方は更に沖田を睨む。
「着替えるんで出てってもらえますかィ?それとも、俺の生着替えが見たくてそこに居るんですかィ?」
沖田の言葉に、土方の顔が一気に紅くなる。
恥ずかしいとかでは無く、こっちは早くしろと苛々しながら見ているのにも関わらず、小馬鹿にされたからだ。
「誰が尻の青いガキの着替えなんか見たがるか!とっとと着替えろ!」
土方は怒りで障子を蹴りつけた後、五月蝿い足音をたてながら廊下を歩いて行った。
「…テメェの反応のがガキ臭せぇんだよォ。」
予想通りな反応に苦笑いをして、小さなため息と共に呟くと、沖田はようやく静かになった部屋でのそのそと着替えを始めた。