・・短編・・

□◆死に場所◆
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貴方の知らない所で死にたくない。




貴方が見えない所で死にたくない。




そう本音を口にしたら。




もう二度とまともに仕事が出来ない。



わかっているけど溢れそうになる。




お願いだから。




死ぬ時は傍で死なせて欲しい。




願わくば。



二人きりの時がいい。




本音を口に出来るから。




俺の死に場所は。




貴方の傍がいい。





生きてる間は口に出来ないから。




傍に居る間は口に出来ないから。






最後に目を閉じる寸前に。




貴方の顔を見たい。





そう思うから死ねない。




俺が死ぬ時は。




貴方が居ない時だから。





だから俺は死ねない。





俺の死に場所は。






いったい何処になるんだろう。















「山崎、仕事だ。」




二人きりの暗い部屋で言葉と共に渡される書類。


その一枚の紙切れに俺の命はかけられる。




そしてそれを失敗した事は無い。




失敗した時は貴方に失望されるから。




失望した時は死ぬ時だから。





どちらになっても死ぬ時だから。




渡された書類に目を通し、山崎は内容を頭に記憶させる。




「……副長。これ、また局長通して無いですね?」




自分に仕事を命令する土方のやり方はいつも二パターンある。


隊内で知れている内容を確定する為の仕事と。




副長が独自に目をつけた内密の仕事。




危険な仕事は後者だ。




隊内にもバレてはいけない。



故に、誰も頼れない。





全てが己にかかっている。




副長の期待も、自分の命も。





図星をつかれた土方は眉間にシワを寄せて煙草の煙を吐き出した。




「余計な詮索は無用だ。テメェは黙って任務を遂行すりゃいいんだよ。」




自分の指摘が気に入らなかったらしい。


不機嫌になった副長は不満げ満載な表情で書類をライターで燃やす。




内密な情報は形に残さない。




知っているのは副長と、自分だけ。





都合良くとれば二人だけの秘密。




そんな事を言ったら殺されるだろうけど。




山崎は小さく苦笑いを浮かべた。



 
 
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