・・短編・・
□◆日常◆
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山崎退の朝は早い。
まだ夜勤組以外は寝静まっている早朝。
目覚まし時計も無いのに、いつもの時間になると目が自然と開く。
体は怠いし頭は働か無いのに嫌がおうにも目は冴える。
−−俺は低血圧だってのに……。
山崎はのっそりと上半身を起こしながら心の中で悪態をつく。
だが、誰に文句を言ってるわけでも無い。
仕事だから、という理由もあるが。
所詮、自分が好きでやっているのだ。
それは否めない。
起こした上半身を捻らせ、布団から腕を伸ばし、枕元に律儀に畳んである隊服を自分のもとへと引き寄せる。
脳にぶどう糖が足りない朝はいつもの地味顔が更にやる気の無い表情に映る。
少ない独りきりの時間だけはこの腑抜けたツラを曝していても誰にも文句は言われない。
「……ふぁぁぁっ。」
情けない声と共に豪快な欠伸が喉から吐き出される。
おっさんになったら嗚咽が出そうな程に開かれた口は、けっして清々しくは無い自室の空気を喉に大量に取り込ませた。
着慣れているハズなのに、朝一はいつも指先がもたつく。
山崎は小さいため息を吐き出しながら着替えを済ませた。
体に隊服を纏わせ、着替えを済ませると漸く頭が仕事モードに切り替わる。
「……いくかぁ。」
ゆっくりと伸びをしてから、よしっと自分を奮い立たせる。
顔を洗えばこのツラも少しはマシになる。
山崎は周りに気配りをしながら静かに自室を後にした。