・・短編・・

□◆罪悪感と疑問◆
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自分の中に生まれる感情。




罪悪感。




それが芽生えて来たのはいつ頃だろう。




セックスしている時は目の前の体に夢中になって忘れてる。



『今日どうよ?』そうセックスの誘いをする時だって、なんとも思わない。





罪悪感。





それが生まれるのはアイツが部屋を出て行く時だ。




事が済めば、風呂に入るのも服を着るのもなんだか億劫で、裸のまま目を閉じる。



アイツと俺の関係の間柄で、睦事の後の甘ったるい会話なんて有りはしない。




お互いに出すモノ出してスッキリしたらそれでおしまい。



そんな関係が楽で。




この上無く気楽で気に入っていた。




なのに、いつからだろう。



アイツが着替えを始める音を横耳に聞いて。



目を閉じている先に閉まる玄関の音を聞いて。





罪悪感。





心臓をチクチクと針に刺されたように痛むのは。




いつからだったのだろう。




アイツが去った一人の部屋でそんな事を考えても。



答えなんて出て来やしない。





いつも背を向けて見ないフリをして来たから。




俺には何も見えて来ない。




どうなればこの痛みは無くなるのだろう。



あっても、さほど邪魔でも無いが確かめたい自分が居る。




アイツがこの部屋を出ていく瞬間に。




閉じているハズの瞼を、またきつくつむる理由を。




確かめて見たい。









「……っ……ハァー……。」




いつもの通り吐き出した性欲にスッキリした後、代わりに襲って来る体の疲れにため息に似た声を吐き出す。



自分が差し入れていた性器も、欲望を吐き出せば簡単に引き抜けるサイズに治まってくる。




自分が体を退かせば、組み敷いていた男も荒い息を整えるように必死で呼吸を繰り返している。



抜き出された瞬間にぶるりと震える体を捩って、その男は自分を見る事も無く両手を顔の前で組んで、自分の顔を覆う。



別にスッキリしたのだから、自分から顔を隠すようにする必要があるのだろうか。



挿入した部分から垂れてくる自分の精液も、自分の腹に吐き出した精液もそのままに。




顔を隠したままただ呼吸を繰り返すその男に、何故かまたチクリと心臓が痛んだ。





罪悪感。





そして、疑問。





俺はこの男に。




何か酷い事をしているのだろうか。





そんな思いが頭を掠めた。




 
 
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