・・３Ｚ・・
□□恋人ごっこ□－November－Half②
1ﾍﾟｰｼﾞ/20ﾍﾟｰｼﾞ
「俺と付き合うか？」
「ただし、卒業までな。」
－－なぁ、土方。
－－俺は酷い奴か？
－－俺はズルイ奴か？
お前が真剣な眼差しで俺を見ているのに。
覚悟を決めた想いで告白してきたのに。
俺は自分の事しか考えて無かったんだ。
俺はお前を気に入ってた。
お前と煙草を吸う時間も気楽で楽しかった。
纏わり付くでも無いのに自分を慕ってくれてるとわかる笑顔に。
話せばそれなりに大人で、なんだかガキなお前を。
お前との関係が気に入ってたんだ。
だから、あんな事を言って。
お前を縛りつけた。
この関係を崩したく無かったんだ。
「それには、ルールがある。」
「守れなかった時は別れるからな。」
－－なぁ、土方。
－－俺は、ズルイだろ？
俺は俺にとって都合のいいお前を。
繋ぎ止めたかったんだ。
でも、受け入れられないから。
『恋人ごっこ』はその為だ。
それをお前は絶対に断らないのがわかっているから。
お前がどんなに嫌だろうと絶対に逆らわないから。
それを知っているから。
縛り付けて、お前を苦しめた。
－－なぁ、土方。
俺は大人で。
お前の担任の教師なのに。
随分子供じみた我が儘で勝手な事をしている。
それをお前が必死に耐えているのを知っていて。
都合のいいお前を手放せないでいる。
だけど。
－－ごめんな。……土方。
－－俺はお前を好きにはならない。
なのに、お前を手放せないから。
『恋人ごっこ』は。
俺にだけ都合のいい。
残酷な関係だ。
お前が俺を好きになんてならなければよかったのに。
そんな風に思う俺は非道だよな。
でも、本当にそうなんだ。
お前の告白を受け入れる事は出来ないから。
でも、告白を断ってお前を失いたく無くて。
早く俺への恋心を忘れて欲しいから。
なぁ。
もっとちゃんと俺を見ろよ。
目を背けないで俺を見ろ。
－－酷い奴なんだよ、俺は。
こんな奴の為に道を踏み外すなんて馬鹿げてる。
こんな奴の為に時間を無駄にするなんて馬鹿だろ。
だから、早く恋心を無くしてくれ。
後、半年。
後、半年しか無いんだから。
早く、諦めてくれ。
今しか無い時間を楽しめよ。
だってお前は高校生だ。
まだまだクソガキなんだから。
大人ぶってたら勿体ないだろ。
だから、そんな目をするな。
悲しそうな顔をするな。
もっとちゃんと俺を見ろ。
そうすれば気付くはずだ。
こんな酷いオッサンを好きになってしまって。
馬鹿だったな、って。
きっと笑って終われるから。
－－なぁ、土方。
－－俺なんかの何がよかった？
狡くて、非道で、自分勝手な。
俺をなんで好きなんだ。
馬鹿だよ。
本当に馬鹿だ。
お前は。