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□□恋人ごっこ□ーDecemberーHalfB
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酷い事をする。痛い事をする。


傷付く事を言う。辛い事を言う。


体に暴力を与える。心に暴力を与える。




どれも酷い、イジメだろう。




だが、アイツは気付いたはずだ。




一番酷いのは。




無関心な事だ。





存在に興味が無い事。




だからアイツは此処に来るんだろう?





ーー求められたくて。



ーー渇望して欲しくて。





此処に来るんだろう?




だから、いいじゃねぇか。




アイツが逃げ場を失ってしまうまで拘束したって。



泣き叫びたい程に苦しい思いをしたって。



誰にも助けを求められない程にアイツを追い詰めたって。





ーー求めて欲しかったんだろ?





渇望したものを与える変わりに。


俺が得る報酬は。





無関心を決め込んだ。



嘘つきな鈍感バカの歪む顔。





ーーテメェにはやらねぇよ、銀時。





お前が傷付くのも。



アイツが苦しむのも。



全部お前のせいだ。





大事なモノをお前は手放した。



だから俺が貰う。




俺は捨てねぇからよ。




どんだけテメェが。




いらねぇと言っても。




俺は捨てねぇ。手放さねぇ。






『気に入っている』





その言葉の意味さえ解らないような馬鹿野郎に。



得られる幸福などありはしねぇ。




だから、手放さ無い。





お前が手放したんだぜ?銀時。



お前が選んだんだぜ?銀時。





満足だろうよォ……?





無関心で居る我慢なんかクソだ。


欲しいモノは何がなんでも欲しいと言い張るのは我が儘じゃねぇ。


強さでもねぇ。





ーーお前は逃げたんだ、銀時。




貫く『覚悟』から逃げたんだ。





弱虫な馬鹿野郎。




見ていてヘドが出る。











 
 



高層ビルのガラス張りの大きな窓に無数の水滴が叩いては流れ落ちて行く。


まだ夜には早いというのに着飾った町並みの明かりが照らす光は夜景のようにぼやけて、闇が早くも地上を覆ってしまったようだ。




曇天から雨が流れている。




ガラス張りの部屋は何も音が無く、先程から白い煙が立ち上っては空気に溶けた。


それを吸うべき人間はその煙草を放置したまま一人では大き過ぎるキングサイズのベッドに寝転んだままだ。



ただ天井を見つめている。




片目の視界ではどうしても領域が狭まってしまって、左側がぼやけて映る。


だから見える範囲が狭いのは否めない。


だが、そのせいで自分の視野が狭いとは思わない。




ただ、固執する割合は高いとは思う。




それを悪いとも思わない。



そうやって生きてきたから。




自分が求めるモノはなんだって手に入れてきたし、不自由も無い。




だからこそ執着する。



欲しいモノは必ず手に入れる。



例え誰かに無駄だと言われても。


自分が欲しいモノなら構わない。




だから、気に入らない。





欲しいモノも。



大切なモノも。




本当は解っているくせに目を逸らして。



本当は解っているくせにいらないと口にする。




『覚悟』の無い臆病者は気に入らない。





だからアイツは『気に入っている』。




『覚悟』を決めた目をしている。


いつも、いつも。





だから『気に入った』。





それを無理矢理にでも手に入れてみたくなった。



要らなくなったら捨てるだけ。



邪魔になったら捨てるだけ。





なのに、アイツは手放したく無い。





それはアイツを特別に『気に入っている』からなのか。




特別に『気に入らない』野郎を好いているからなのか。





自分の感情が可笑しくて仕方ない。



だから人間ってのは面白れぇ生き物なんだ。



これだからやめられない。




恋愛なんて無駄でしかない感情の浮き沈みに翻弄される奴らの馬鹿さ加減を見ていて腹がよじれそうになる。



そのくせ自分に縋ってくる人間はそんな奴らばかりで、どうにも自分が寄せつけるらしい。





だから俺は手放さない。



自ら望んでやってきた獲物を。



好きに食して何が悪い?





だから俺の好きにする。





『気に入っている』理由も明確だ。





アイツがあまりにも馬鹿で醜いから。




可愛くて仕方がねぇんだ。






ーー可哀相だなァ……土方。





選んだ相手が悪かった。



それはお前もわかっていたハズだ。



そしてそう仕向けたのは。





『気に入らない』馬鹿野郎のせい。





お前は可哀相だよなァ。





可哀相だよ。






笑っちまう位な。





 
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