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□□恋人ごっこ□−December−Half@
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ひさしぶりにぐっすりと穏やかに眠っていた気がする。
いつもいつも夢に出て来るのはやっぱり先生だけれど。
今日はいつもと違った。
先生は裸では無く白衣を着ていて、俺に微笑んでた。
そして、俺を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。
『泣くなよ』
そう優しく囁いてくれていた。
言葉の理由はわからなかったけど。
多分、俺は泣いていたんだろう。
高杉とセックスをした後に見た夢の中の先生は。
淀みきった欲望が見せる淫らな先生では無くて。
自分にいつも見せてくれる。
優しい、大人な、いつもの先生の姿で。
俺は本当に性欲だけだったんだと思った。
先生とじゃなくても。
先生に抱かれているつもりでする。
男とのセックスだったら誰でもよかったんだと。
そう、自分の欲望を確信してしまった。
−−あぁ……早く卒業しよう。
先生を、解放してあげなければ。
こんな馬鹿な自分に付き合わせていた。
先生の時間を返してあげなければ。
高校を卒業するまでの『恋人ごっこ』
違う。
先生から卒業する為の『恋人ごっこ』
そうだ。
先生が俺の為に作ってくれた『恋人ルール』は。
その為にあったんだ。
先生に恋をする事の無謀さ。
先生に欲情する事の虚しさ。
そして、結局は。
自分はまだガキで。
それを語るには取るに足らない馬鹿な人間だと。
知る為にあったんだ。
結局は恋なんて幻想で。
性欲だけがリアル過ぎて。
自分でも自分をコントロール出来ないような俺に。
先生を好きになる資格なんか無かったんだ。
『控え目で頭のいい子』
先生の言葉の意味が漸くわかった。
俺は理解力の足りない馬鹿で。
性欲も抑え切れない。
貪欲なガキだった。
−−卒業しよう。
−−先生から。
ねぇ、先生。
嘘だと。
勘違いだと思って笑っていいから。
最後だけは言わせて。
俺は先生を好きだった。
本当に、好きだった。
でもそれは恋にも、愛にも。
友情にもなれ無くて。
行き場の無いただの妄想だったけど。
最後だけは言わせて欲しい。
−−俺は先生が好きでした。
きっと先生は。
困った顔して、笑うよね。
そして解放された安堵感で。
優しい声できっと言うんだ。
「馬鹿だな、お前。」
そうだね、先生。
本当、その通りだよ。
馬鹿馬鹿しくて涙も出ない。
「泣くなよ」
なのにやっぱり俺は泣いたんだ。
この恋心の終焉が。
ガキの妄想で終わってしまった事が。
やっぱり悲しくて。
虚しくて。
俺はきっと、泣いたんだ。