・・金黒・・
□●愛シテ●ーAfter Episodeー
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自分の帰りをしっぽ振って待っていたあの頃のしおらしい居候兼ペットの姿はどこへやら。
今、自分の目の前に居るのは雄全快の男だ。
さっきから全力で引き剥がそうと力を入れていたのに微動だにしない身体は当たりが強そうだし、掴んだ腕はきちんと筋肉がついていてホストなんてヤワそうな名前の職についているとは思えない。
そういえば前に喧嘩は強いみたいな事を口にしていたし、いい身体をしていたのも知ってる。
――マズイ。
土方は妙な焦りを感じていた。
コイツの事を好きだと思う。
だが、自分の口にしていた好きはなんというかもっとフワフワした感じの好きで。
かといっていい歳した大人だからそういうのがあるのは勿論承知の事実だけれど。
いきなり生々しい肉体関係的な行動に出られると臆してしまうのが正直な所だ。
想像もしていなかったし、それに実際想像つかない。
なのにこんな押せ押せでこられては思考がついて行けるわけがなくて、若干パニックだ。
だって、このままでは。
なんだか俺がコイツに食われる的な雰囲気になってるし。
――待て待て、落ち着け。
コイツは男で俺も男。
もしその、なんだ。
愛し合う二人が自然な流れで行うであろうセックス的な行為は、男女ならきちんとした役割分担が決まっているわけで。
そりゃ男女間で行うのが一般的なんだから当たり前だが、突っ込む方と突っ込まれる方が存在するんだろう。
じゃあ男同士となるとやっぱりそれは男役と女役の役割分担を設けなければ成立しないから、どっちかが女役をやらなければならない。
ただの出し合いっこなんてそんなガキみたいな可愛い行為じゃ済まされなさそうな雰囲気だし、やっぱりコイツの頭の中では所謂セックス、を目指しているわけで。
それで俺が。
女役になる、という事で。
………………。
「ちょっと待てェェ!!」
頭の中で計算式を編み出してしまった土方が叫び声をあげる。
間近でその声を聞いた金時はビクリと身体を揺らした。
「ちょっと待て、落ち着け。落ち着いて話をしよう。まずは座ってお茶でも飲みながら今後の話をしようじゃないか」
「え、いきなり何?」
「大事な事だろ?そのどっちが上でどっちが下とか、どっちがツッコまれてどっちがツッコミとか役割分担的な事はじっくり話して決めないと」
「なにそれ上下関係?漫才コンビ?アンタ付き合う時そんな面倒な話し合いから始めんの?」
土方が言いたい事が上手く伝わらないらしく、金時は呆れ顔で土方を見つめている。
「まぁアンタがそういうルールを作りたいってんなら付き合っちゃるから、取り敢えずヤル事ヤッてからな」
「待て待てェェ!!舐めんな触んな!!そのヤルにあたって大事な話をするんだよボケェ!!」
そんな話など二の次だと自分の首筋に顔を埋めた金時の身体を土方は力いっぱい引き剥がす。
まだ靴だって脱いでいない立ちっぱなしの状態。
なんでこんなに切羽詰まっているんだと、土方は焦りを隠せない。
このままただ流されてしまったら確実に自分は犯される。
ヤラレル。
無理。
嫌だ。
いや、ヤル事自体は嫌じゃないんだろうけれども、つーか男同士でヤルってナニをナニに。
いやいや、きっと穴っつったらあの穴なんだろうけれど無理だろ絶対痛い。痛いなんてもんじゃない絶対気絶するわ。
それを俺がヤラれるとか無理。でも、そうしたら自ずと俺がコイツの穴に挿入しなければならないわけで。
つーか、コイツのあのあそこの穴に俺のを突っ込むと。
……………。
「無理だァァァ!!!!」
土方は頭を抱えて叫んだ。
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