・・短編弐・・
□◆未完成な僕ら◆
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「だってさ、お前俺とヤル時女役じゃん?たまにゃ突っ込みたくもなるんじゃねぇの?」
銀時が平然とした顔で一番聞かれたくない事を聞いてくる。
確かに最初からの流れでいつも抱かれる側に回っている自分だが、かといって納得してそうしているわけでは無い。
だが、だからといって銀時を抱きたいとかも思わない。
何故なのかは分からないが。
「別に。結局出すのは同じ事だろ」
そう、多分それが理由。
突っ込むにしたって突っ込まれるにしたって、要は出せば気持ちがいい。それだけ。
動かなくて済むから楽だし、なんて面倒臭がりな理由も一部含まれる。
それに相手が女じゃないならいろいろ気を使う必要も無いし、実際ヤられる側になって初めて知った快感だってある。
それを総称して気持ちがいいからって理由でいいと思うのだ。
「そりゃそうだけどよ。」
土方の答えを聞いた銀時が静かに腕を伸ばし、土方の頬に触れる。
土方は横目でその仕草を見た。
「そんなに気持ちいい?俺とヤんの」
ニヤリと笑う銀時の顔はいやらしさを含んだもので。
何故だかそれに反応するのは心より体の方だった。
「……そんな事は言って無ぇ」
どうだろうか。
体だけは正直に反応しているのに、言葉は反対の事を口にしてしまう。
どちらかが終わりと言えば終わる関係なのだから、何がきっかけで終わりになるかなんか曖昧だ。
コイツに女が出来たら、なのか俺に女が出来たら、なのか。
もしくは飽きたら、とか。
いつ終わってもおかしくは無い刹那。
それならただ、楽しむ方が正解だろう。
「いつか女入れて3Pとかしてみっか?」
そう思うのに。
こんな事を口にされると、腹の奥に重いものがもたげてくる。
それは言うなれば嫉妬とか傷付いた痛みとかに似てて。
『気楽』『簡単』『遊び』
そんな言葉だけで繋がっているコイツとの関係の中で、それは縁が無いはずの感情。
それが微かに自分を攻めてくる感覚が襲う。
気持ちがいいからコイツとセックスしていて、楽だからこんな関係を続けていて。
何も残らない間柄だから、続けていられる刹那。
それが崩れてしまったら。
きっとこれは簡単に終わってしまうものなのに。
――何も考えるな。
何かに気付こうとしたり深追いするのは危険だと、自分の心の何処かから声がする。
いつ終わっても不思議じゃない間柄だからこそ、終わりを望むつもりは無い。
終わりたくないとか縋り付くわけじゃなく、どうせいつかは終わるのだから終わりを求める必要が無いだけだ。
ただ、そこに。
もし『簡単』『気楽』『遊び』では片付かない何かが芽生えてしまったら。
終わりにするのは俺じゃなく、きっとコイツの方だから。
「……変態」
そう言って軽く笑って唇を受け入れる。