・・短編弐・・

□◆会いたかった◆
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やっぱり。


聞かないんだな。



「……はぁ、…ッ……!」



声を殺す為に堅くなに結んでいた口に指を入れられ、僅かに声が漏れてしまう。

いつもより荒々しい手付きで愛撫される度に、過剰に反応する体が跳ねる。



――コイツは何も聞かない。



俺が何も言わないのを知っていて。


コイツは何も聞かない。



何も考えたく無くて。


酷くされたくて。


生きている事を確認したくて。



俺はコイツとセックスする為に会いに来た。


何も聞きやしないくせに。


俺の要望全てを汲み取ってしまう。



「……痛ぇ…、」



肩や胸に噛み付くような跡を無数につけられて、そんな文句を口にしてみる。

じんじんと疼く場所全てがコイツによってなぞられた。


全部、侵して欲しい。


心の中も、全部。



「……いい顔してるぜ」



性的な妖しい笑みを浮かべる銀時を見つめて、土方は唇を噛み締めた。



――いつも、そうだ。



俺を責める事もしない。


いつも『こう』雪崩れ込むのを俺のせいにはしない。



全部、受け止めて。


全部、受け入れて。


自分で全部、抱え込む。



それがいつも。


俺を楽にしてくれる。


これを甘やかすというのではないなら、なんだというのか。



俺はいつも、コイツに甘えている。


俺はいつも、コイツに甘やかされている。



だから、会いたくなる。


その体に、その心に触れたくて。


この体に、この心に触れて欲しくて。



お前だけを、求めている。



この感情の名を知っている。


でも、口にはしたくない。


そんな言葉、どうしても似合わない気がするし。



口にしなくても。


きっともうバレてる。



自分の体を包み込むように覆い被さる男の背中に腕を回す。


口に出来ない言葉を伝えるように強く抱き締めた。



「……そんなに俺に会いたかった?」



熱い息を吐き出しながら、銀時が耳元で囁く。


だから、土方は薄く笑った。



「……あぁ。会いたかった」



お前にこうしてもらえないと。



生きている実感が無いんだ。



お前にこうしてもらえないと。


生きていてもいいと、許された気がしない。



無数の命を奪ったこの手を。


血にまみれたこの体を。



優しく包んでくれる腕が無いと、もう駄目なんだ。



やっぱり、甘えだよな。


甘やかすコイツが悪いんだ。



「……可愛い事言っちゃってさ……」



銀時が笑いながら言う。



そうか、可愛いのか。


コイツにはそんな風に見えるのか。



趣味悪いやつだな、コイツ。


でも、まぁいいか。



どうせコイツにしか見せない姿なんだ。


コイツがいいなら、いいか。



いいんだよ、な?







END




20120130




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