・・短編・・
□◆君の左手◆
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「土方くん…違うでしょソレ、好きだから抱きたいんでしょうが。ソコはやっぱり生徒が可愛く抱かれる側でしょうよ。」
「そんなん知るか。抱かれる側なんて御免なんだよ。好きなら譲りやがれ。」
ーーすげぇ会話だな、オイ。
「いや、若い子のケツの方が弾力があるから何でも受け入れるキャパ持ってるからね。オッサンの肛門じゃあすぐ裂けちゃうし服部と同類になっちゃうから。」
「え、服部センセってそっちの趣味で痔になったのかよ?まさかアンタらそういう関係?」
ーーなんだよこの会話。
ーーいいのか、コレ。
「ちげぇーよ!!誰があんな痔持ちヤローなんかと乳くり合うかァ!先生は土方がいいの!土方だから突っ込みたいの!」
「アンタそんだけ俺を好きなら痔だって乗り越えられるだろ。大丈夫、頑張れよ。」
「何が大丈夫だァ!?俺はお前に突っ込みたいのォ!若い時の苦労は買ってでもしろって言うだろ!大人しく抱かれなさいよ!」
ーー返事も聞いてないよ。
ーーお前が俺をどう思ってるかも聞いてないんですケド。
言い合いをしながら足はどんどん土方に近付いて、もう目の前。
こんなに至近距離でコイツの顔を見るなんて初めてに近い。
冷静を装う顔とは別に、心臓はバクバクいってる。
でも目の前の生徒も逃げるでも避けるでも無く、ずっと自分を見つめてる。
微かに細められている瞳がなんだか優しげで、いますぐに抱きしめたい気分になった。
「……じゃあさ、先生。」
企んでいるような笑みを浮かべて笑う土方。
誘われているような小悪魔目線に見えるからまいった。
「アンタに抱かれてもいいって思える位、俺を好きにさせてみろよ。」
さほど変わらない身長のくせに、若干斜めから入る上目遣い。
これは可愛いガキなんかじゃない。
上から目線の小悪魔さん。
誘い受けですかコノヤロー。
ありがとうございます。大好物です。
「言ったなコノヤロー。知らねぇぞ?俺のテクで骨抜きにしてやっかんな。」
「アンタ変態そうだよな。縛られたりとか勘弁だぜ。」
言う程、嫌そうでも無いくせに。
てか、いいのこの会話の進行具合。
とりあえず好きになるかは付き合ってみてから決めるタイプなのか?この子。
俺のお試し期間?
それなら好都合だ。
絶対に離さねェ!!
「都合良く明日は日曜だ。早速ベタ惚れにさせてやっから家来いや。」
偉そうな口ぶりでそんな事を吐きながら、勝手に右手が土方の顎に伸びる。
上目遣いの顔をあげさせて、真っ正面から見つめさせる。
上目遣いじゃないのに、やっぱり誘われてる気がするな。
天然煽り系?無自覚エロ系?
大好物です、ホント。
「最初のデートでソッコー家かよ。ムードも演出もクソも無ぇなアンタ。」
最後にモテねぇハズだ、なんて可愛く無い本当の事をほざくクソガキちゃんはちょっと憎たらしいハズなのに。
今、デートって言ったよねこの子?
ホント、いいんだよね??
「んじゃ、ご要望にお答えしてデートコース変更しますぅ。朝迎えに行って適当に遊んでからセックスで。」
もうすぐ唇が触れる位置まで近付いているのに、照れ隠しのおしゃべり口が閉じてくれない。
「あ、俺観てぇ映画あるんだ。丁度いいから明日付き合えよ。つーか、まだセックスするとは言って無ぇぞ変態教師。」
この唇を合わせるハズの唇も、さっきから憎まれ口のおしゃべりが止まらない。
「あ?映画?何観てぇのよ。」
「独り暮らしのアリエンティ。」
「おまっ、マジでか!?アニメかよ!それを野郎二人で観んのかよ!?」
「……嫌ならデートも止めだな。好きな奴の趣味にも付き合え無ぇってんならそこまでして…」
「行きますぅ!!行けばいいんだろ!なんだ、そのアリエンジャー?それ観たらセックスな!」
「だからセックスはまだ決定じゃ無ぇって言ってんだろーがァ!どんだけ必死だよアンタ!」
お互い顔に唾が飛ぶ位の叫びっぷり。
なんつーか、いろいろすっ飛ばした感じだったからムードとか何もかも弾け飛んじゃったのだろうか。
自分の心臓は。
相変わらずバクバクしてるけど。