・・短編・・
□◆他が為、自分の為◆
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「男の夢はね、でかけりゃいいってもんじゃねぇのよ。今、ここにある小さな幸せの為に必死になるのもいいじゃないの。」
銀時がスクラッチを握り潰しめながら言う。
このスクラッチは今削るだけで当たりかハズレかわかり、当たれば少ないが、すぐに金が貰える。
ローリスク、ローリターンなくじだ。
神楽が言っている『サマージャンボ大江戸宝くじ』は一枚も高いし、当たる確率が低い上に発表にも時間がかかる。
その変わり当たり金額はでかいが、かなりのハイリスク、ハイリターン。
今の銀時にとっては、今、すぐに、この場で……
金が欲しいんだコノヤロォォォォォーーー!!!!
あのパチ屋金返せェェェェェーーー!!!
「なんだ。シケタしょぼ金狙いやがって。お前になんか夢を語る資格ねぇな。」
神楽は銀時を蔑んだように見て、ヘッと嘲笑った。
「お前、本当酷いよね。あれ、何これ。俺、急に長谷川さんに会いたくなってきたけど。」
神楽の冷たい態度にうなだれる。
そんな二人の後ろから近付く影が映った。
「旦那、真昼間っから賭け事ですかィ?随分景気いいんだなァ。」
「お前か…ツイてない日ってのはつくづく悪いもンを引き寄せるらしいな。」
近付いて来たのが沖田だとわかると、銀時は明らかに嫌そうな顔をした。
なんで、こう凹んでいる時に更に追い討ちをかけるような奴らしか寄って来ないのか。
誰か優しく慰めてくれる人いないのかな。
ああ、キャバクラ行きたい。
癒されたい。
ああ、そうだ。京都へ行こう。
いや、違う。それにも何にもまず。
金がネェェェェェェ!!!!!
「ツイてない日に宝くじなんて買って当たるわけねぇだろ。相変わらず頭が悪いな。」
あ、更に追い討ち。
あ、てゆーかお前らなんで俺を見つけるといっつも寄ってくるんだ。
俺の熱狂的ファンか?
隊長誰だ。
沖田の後ろから銀時を馬鹿にするのが嬉しそうに土方が近寄り、銀時にそう言った。
確かにツイてない日に宝くじを買うのは適作では無い。
しかし、ギャンブルで負けた穴を埋めるのは何故かギャンブルになってしまう悲しい性。
「これはこれは税金ドロボーの親玉さん。可哀相な市民イジメですかコノヤロー。」
「誰が税金ドロボーの親玉だ。」
銀時の台詞に眉間にシワが寄る土方。