・・短編・・
□◆夢見◆
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最悪の夢見だった。
やっと夢から覚めて目覚めた時さえ、胸糞悪いあの痛みは。
忌ま忌ましい程に残っていた。
沖田は舌打ちをして布団からはい出る。
現実に映るアイツの顔は。
苦々しい表情に、臭い煙草を口にくわえた憎らしい野郎の顔のくせに。
あの微笑みはなんだ。
自分の作り出した夢の中のアイツは。
自分の都合のいいように美化されていやがる。
沖田は障子を開け放った。
そして、その視線が捕らえたのは。
近藤と廊下を歩く、アイツの姿。
夢の中と同じ、微笑み。
力の入っていない。
自然な微笑みだ。
−−憎たらしい野郎だ……。
夢で自分に笑いかけていた微笑みは。
現実で見たアイツの微笑みそのものだ。
ただ、それは自分に、ではない。
自分の大切な近藤にのみ向けられる笑顔。
自分の大切な近藤の隣に居る時にだけ、見せられる笑顔。
−−本当に憎らしいぜィ……。
自分の大切なモノを奪い。
自分が欲しいモノを。
自分では無い相手に向けられる。
こんな屈辱は無い。
だから、憎たらしいんだ。
あの野郎は。
そして、その微笑みを見て。
やっぱり胸が痛いだなんて。
俺は死んだ方がいい。
嫌。
アイツを消したらいい。
「ホント死んでくれよ……土方クソ野郎ォ。」
だから俺は毎日そう呟く。
そしてまた。
夢にはあの野郎が現れるんだ。
END
2010.02.25