・・短編・・

□◆−隣−Side沖田◆
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  あぁ、面倒臭せぇ。



空は快晴。


空気は春。



無意識の内に眠たくなるのが人間だ。


ベンチに腰掛けている自分の頭を撫でるように春の暖かい風がそよいでくる。


これは、眠りなさいと言われているんだよなぁ…。



沖田は勝手に納得しながら、静かに目を閉じた。



その空気の中に、人の気配を感じる。



だが、嫌な気配では無い。



むしろ、同類の匂いがする。



「よぉ、総一郎くん。仕事サボってお昼寝か?」



その空気の主は自分の頭をなでる春風と同じ位、穏やかでトゲが無い。


沖田はゆっくりと目を開いて声をかけてきた銀時の方を見て微笑んだ。



「総悟です、旦那。」



いつものやり取りをすませると、銀時も軽く笑顔になり、沖田の座るベンチの隣に座る。



銀時と一緒に居ると、自分の空間が邪魔されなくていい。


近くに居るのに寄り過ぎないというか。


話かけてくる割には、自分に対して興味が無い所とか。



何と無く、感じ方も、中身も全然違うのに近藤と居る時のように、温かい。



「こんな日はゆっくり昼寝に限るよなぁ。気持ち良すぎて仕事なんかする気になれねぇよ。」



銀時はベンチの背もたれに腕を預け、気持ちよさそうに目を細めて空を見ている。


沖田は小さく笑った。



「旦那は仕事してねぇじゃねぇですか。昼寝し放題の生活の癖によく言いまさァ。」



「お、言うじゃねぇか税金ドロボーが。良い睡眠は大事だぞ。人間、人生の半分は寝て過ごすんだからな。」



銀時は沖田の言葉に、眉をひそめながらも、楽しそうに話す。


視線はお互い、空を見たままだ。



他愛も無いやり取りが落ち着く。



こんな時間が続くのならいいのに。



沖田は自然と目を閉じる。



今、程よい睡魔が体を支配している。



本当に眠れたら、気持ちいいんだろう。



遠くから聞こえるあの、怒鳴り声さえ無ければ。



目を閉じたせいで冴えてしまった聴覚に、土方が自分を捜す怒鳴り声が聞こえてくる。



沖田はうんざりした顔で目を開ける。



「今日も元気に呼んでるねぇ…あの副長さん。あいつは四季を感じて生きるとか出来ねぇタイプだな。」



銀時も土方の声が邪魔そうな顔をして呟く。


沖田は銀時の顔を見て笑った。



「ああいう仕事馬鹿は退職と同時にボケるんでさァ。第二の人生、なんてスローライフ始めた瞬間、入院ですぜ。」



沖田の言葉に、銀時はぷっと吹き出した。



「ありえそー。」



土方の声が聞こえる度に、二人して小さく笑った。


 
 
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