・・短編・・
□◆−隣−Side土方◆
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何かにつけて沖田を同行させるのには意味がある。
その意味を知ってか知らずか、あいつはいつも期待に反する行動を取る。
大体サボる姿をわざと見せ付けるかのようにして、自分をいつもおちょくってくるのだ。
−−あのクソガキ…。
土方は苛々した顔つきで辺りを見回す。
奴がサボりそうな場所は読めている。
奴が考えそうな事は読めている。
ほっとけばいいのにそうもいかないのは。
性分でもあり、癖にも似ている。
これが沖田と自分との関係になりつつあるのだ。
「…俺は心配性の親父かっつうんだよ…。」
姿が見えなければ捜し。
時間に起きて来なければ起こしに行き。
まったく、不愉快だ。
土方は小さく舌打ちをした後、時計に目をやる。
本当に、まずい。
近藤さんの代わりに自分が出る約束の会食。
時間に遅れるわけには行かない。
土方の苛々が沸点に達した。
「総悟ォォ!!!どこ行きやがったぁぁぁ!!!出てきやがれー!!!!」
何かがキレたように、いきなり大声で怒鳴る。
土方の周りを囲む隊士達も、通行人も驚いて土方を凝視する。
「総悟ー!!!!クソガキャァー!!!戻ってきやがれー!!!」
「ふ、副長!落ち着いてください!!」
土方の側に居た原田が何事かと、慌てて土方に走り寄る。
苛々が頂点に達した土方を抑えられる人間はこの場には存在しなかったが、何もしないわけには行かない。
土方は、自分を抑えに着た原田をギロリと睨みつけた。
「てめぇらもとっととあのアホ捜してきやがれっ!!2分以内に見つけられなかったら全員切腹だぁ!!!」
怒りにまかせて怒鳴る土方の暴君ぶりに、隊士達の顔が青ざめる。
「そ、そんな!副長……」
「いーち…にーい!」
原田達の必死の言葉も聞かずに、土方は生命のカウントダウンを始める。
顔がマジ顔だ。
そんな土方を見て、隊士達は一斉に散らばり、沖田捜索の為、姿を消して行った。
散らばった隊士達が消えた路地を一つずつ見つめる。
そして、誰も行かない通路が一つ残っているのを確認した。
「…絶対に見付けてぶち殺してやる…。」
まるで悪魔のような笑みを浮かべ、土方はゆらりとその体を路地裏へと滑り込ませた。