・・短編・・

□◆かわいいひと◆
2ページ/16ページ

 
 


俺の名前は山崎退。



泣く子も黙る真選組の監察方だ。



そして今、俺は重要な任務を請け負っている。


だが、それは隊の仕事でも、頼まれ事でも無い。




自分の為の重要任務だ。




標的は鬼の副長。



土方十四郎。





彼の誕生日が間近に迫った今。




俺は愛しい彼の為の誕生日プレゼントを選ぶべく、監察している。





山崎は土方の自室の襖を薄く開け、先程から土方を食い入るように見つめている。



誕生日と、クリスマス前と卒業式は告白の絶好のタイミングなのだ。





−−絶対に振り向かせてみせる!!




山崎は握り拳に力を込め、決意新たに土方を見つめた。




監察の対象である土方は、自室で書類のチェックをしている。



山積みの書類を一枚一枚律儀に目を通してはサインをしている。



仕事に真面目で厳しいが、そんな仕事熱心な凜とした姿を見るのが一番好きなのだ。




−−今日も綺麗だぜ、ちくしょうっ!!!




山崎は一人、のぞき見している廊下で悶えた。





「……あ、ちきしょ…インク無くなりやがった。」





監察をしていた山崎の耳に土方の独り文句が聞こえた。



山崎は目を鋭く光らせて、土方の様子を見つめた。





「…これ書きづれぇんだよな…まぁ仕方ねぇか……。」




土方は舌打ちしながら、出なくなった万年筆をごみ箱へ投げ入れ、机から嫌そうに違うペンを取り出した。





−−これだっっ!!!!!





山崎はくわっと目を見開き、ガッツポーズを取った。



その瞬間、廊下を人とは思えぬ速さで駆け抜けて行った。





−−万年筆!!!!





山崎は絶対に土方に喜ばれる誕生日プレゼントを確定し、顔を綻ばせながら屯所を出て行った。




 
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ