・・短編・・
□◆かわいいひと◆
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俺の名前は山崎退。
泣く子も黙る真選組の監察方だ。
そして今、俺は重要な任務を請け負っている。
だが、それは隊の仕事でも、頼まれ事でも無い。
自分の為の重要任務だ。
標的は鬼の副長。
土方十四郎。
彼の誕生日が間近に迫った今。
俺は愛しい彼の為の誕生日プレゼントを選ぶべく、監察している。
山崎は土方の自室の襖を薄く開け、先程から土方を食い入るように見つめている。
誕生日と、クリスマス前と卒業式は告白の絶好のタイミングなのだ。
−−絶対に振り向かせてみせる!!
山崎は握り拳に力を込め、決意新たに土方を見つめた。
監察の対象である土方は、自室で書類のチェックをしている。
山積みの書類を一枚一枚律儀に目を通してはサインをしている。
仕事に真面目で厳しいが、そんな仕事熱心な凜とした姿を見るのが一番好きなのだ。
−−今日も綺麗だぜ、ちくしょうっ!!!
山崎は一人、のぞき見している廊下で悶えた。
「……あ、ちきしょ…インク無くなりやがった。」
監察をしていた山崎の耳に土方の独り文句が聞こえた。
山崎は目を鋭く光らせて、土方の様子を見つめた。
「…これ書きづれぇんだよな…まぁ仕方ねぇか……。」
土方は舌打ちしながら、出なくなった万年筆をごみ箱へ投げ入れ、机から嫌そうに違うペンを取り出した。
−−これだっっ!!!!!
山崎はくわっと目を見開き、ガッツポーズを取った。
その瞬間、廊下を人とは思えぬ速さで駆け抜けて行った。
−−万年筆!!!!
山崎は絶対に土方に喜ばれる誕生日プレゼントを確定し、顔を綻ばせながら屯所を出て行った。