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□□恋人ごっこ□ーDecemberーHalfA
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空が、重い。




分厚い灰色の雲が空全体を満遍なく覆っている。


これでは空を行くサンタクロースもさぞ仕事がしづらいだろう。




その空の風貌は自分の心に似ていて。



重苦しい灰色が胸の中に霧がかる。








昨日は眠れなかった。





寝ようとする本能を抑制してでも格闘する脳みその思考は混乱するばかりで。



睡眠よりも煙草を欲していた。




一晩で一箱を空けてしまうような異常な吸い方も。




煙草ぐらいでこの思考が治まってくれるなら安いものだと思った。




なのに、消えない。





二つの姿が頭にチラついては困惑して。



二つの姿を思い出す度に胸が締め付けられた。






だから、眠れなかった。






アイツの事を考えていたら。





眠れなくなった。








ーー俺は……。






ーーどうすればいい……?






ーーどうしたい……?






答えを出す為に行った先に。




こんな現実が待っていたなんて。





誰が予想出来た?






出来るわけないだろ?






別に同性同士の恋愛を否定するつもりは無い。





ただ、自分にはありえないと思っていただけで。





誰が誰を好きになろうと。





自分に害が無ければ自由だと思っていた。






だけどどうにも納得出来ない。






ーーなんで、土方が……?




よりによって。




ーーなんで、高杉が……?





想像出来ない。




したくない。





気持ち悪いとか嫌悪感とかじゃなくて。





あの二つの姿がどうやっても重ならない。






だって、土方は。






俺が好きだ。






馬鹿みたいに真っ直ぐに。






俺が好きなんだ。






なのに、何故高杉が出て来る?






なんで。







セックスなんかしてる?







意味わかんねぇ……。





理解出来ねぇ……。








『俺から誘ったんだ。セックスするかってな。』





高杉の言葉が嘘にしか聞こえない。





だってコイツは自分からセックスを求めるような男じゃなかった。


嫌味ったらしい甘い匂いを纏って、いつも有り余る程にフェロモン全開のくせに。




なんで、高杉からアイツを誘うんだ。






『俺ァ本気だぜ?』





ただのセックスフレンドだと言ってくれればまだ信用性があったのに。




高杉の言葉は嘘にしか聞こえない。




だってアイツは自分に好意を向けてくる奴をいたぶって、弄んで楽しむのが趣味のような野郎なのに。





なんで、土方に本気になるんだ。







わからない。




理解出来ない。







高杉が最後に言った言葉。







『アイツが気に入ってんだ。』






その言葉を聞いて。





また拳を振り下ろしてしまった。






『気に入っている』






残酷な言葉だと思った。







そのフレーズに吐き気がした。





自分が散々使ってきた言葉だ。





土方を表す時の表現。






『気に入っている』






はっきりと『好き』だと言ってやれないから。







『気に入っている。』






俺が『好き』だと口にするのは間違いだから。





俺のアイツへの『好き』は。






きっと、生徒として人間としてでの『好き』で。






土方が俺に伝えた。






恋愛感情の『好き』では無いから。





『気に入っている。』





そう使っていたのに。






結局、高杉の口から出た言葉も。





『気に入っている。』






それだった事に腹が立つ。






本気だと言うのなら。




セックスしていると言うのなら。







何故、『気に入っている』なんだ。






そんなズルイ大人ばかりを見て。





アイツはどれだけ傷付いたんだろう。







ーー俺に、何が出来る?





傷付いたアイツを振り回す事ばかりを選んできた。




苦しむアイツを見て見ぬフリをして自分勝手に振る舞ってきた。







ーーなぁ、土方。





ーーお前に何がしてやれる?






お前は俺が好きなんだ。





それを疑う程、馬鹿じゃない。







でも、高杉が言った事が本当なら。







お前は俺に何を望んでるんだ?






俺との『恋人ごっこ』を終わらせて。






高杉と『恋愛』をするつもりか?






土方。





やめとけよ。







あの野郎はやめとけ。






高杉が本当にお前に本気なら。






きっとお前は駄目になる。






あの野郎は、やめとけよ。








もし、セックスしたいんなら。





愛情が無いセックスでもいいなら。







俺が相手してやるから。






ただ、セックスしたいだけなら。







俺がお前を抱いてやるから。









なんて。







思う俺が一番、残酷か。








俺とのセックスじゃ。





アイツの苦しみは増すだけだ。






アイツからの恋心を知りながら。



ただの性欲処理のセックスだなんて。






どう考えても酷すぎる。







ーーなぁ、土方。






ーー俺はどうすればいい?






お前を駄目にしたくないんだ。





お前を失いたくないんだ。









高杉の野郎なんかに。






お前を駄目にされたくない。







なのに俺が使える言葉はあの野郎と同じ。






『気に入っているから。』







どうしても。







『好き』とは言えない。







自分を殴りたい。








 
 
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