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□□初恋□−プロローグ−
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ねぇ、先生。


あの日、声をかけられた時。



先生が眩しく見えたのは。



髪の色のせいじゃなかったんだ。




白黒だった俺の景色の中に。




眩しい光が見えた気がしたんだ。




俺を呼び止める笑顔を見た時に。




すごく、眩しかったんだ。




多分、その時に。




俺は先生を好きになったんだ。





ねぇ、先生。



『その他大勢』から抜け出すには。



何をすればいい?




先生は、何が好き?



どんな話が好き?



どんな、子が好き?




どうしたら、『特別』になれる?




ねぇ、先生。




好きになっても仕方が無いのかな?




好きになっても無駄なのかな?




俺にはわからないよ。




ただ、好きなだけじゃ駄目かな?




先生が教えてくれる教科書には。



どこにも答えが書いてないよ。




答えが見つからないんだ。




ねぇ、先生。



ねぇ、先生?




どうしたら先生を独り占め出来る…?
















ガシャン!ガシャン!!!




「…っ、クソッ…!」




校舎裏口の自転車置場の陰で、自転車が倒れる音がする。



倒れた自転車の間には数人の男が倒れていた。


口から血を流して痛がっている者。


腹を抑えて唸っている者。


やられながらも睨みつけている者。




−−4、5人か?




校舎の非常階段からの見晴らしはバッチリだった。



3階の階段からはその光景が良く見える。



やられている仲間は全部で5人。



やってる方は、一人だ。




−−1対5か…若けーなぁー。




非常階段で煙草をふかしていた銀時の視界には生徒同士の喧嘩が繰り広げられていた。




穏やかな気候の春。


部活動も終わった夕暮れ時。



暗くなる視界にポツリと浮かぶ自転車置場の明かりの側で、それを見つけた。




「…てめぇいい気になるなよ…。クソ餓鬼が調子に乗りやがって…!」




負け組側の一人の男が、倒れながら相手を睨みつけて言う。




「…いきなり喧嘩吹っ掛けて来たのはあんたらだろその。クソ餓鬼相手に勝てねぇなんてカスだな。」



後輩らしい男は、睨む男を馬鹿にしたように笑った。



その顔を見た瞬間、男達は頭に血が昇ったように真っ赤になった。



「てめぇ…っ…!ナメてんじゃねぇぞっ!!!」



怒りに染まった一人の男が、倒れた拍子に割れた自転車のミラーのガラス片を手に握りしめ、男に振り上げた。




「おー、お前らーいい加減にしねーと陽が暮れっぞー。」



いくらなんでも刃物沙汰はまずいと思った銀時が階段から、生徒達に声をかける。



銀時の声にビクリと反応した男達は、我に返ったようにバタバタと逃げて行った。



 
 
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