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□□恋人ごっこ□−January−Half@
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ただ、寒かった。



もうよくわからないけれど。



とにかく、寒かった。



薄い掛け布団を体にかけていても布団の中で震える体はいつまでたっても熱を帯びて来ない。


それが雨に濡れたからだ、と言い訳すれば簡単だった。



だが、理由は明確で。



知らない間に零れる涙が証明。



自分が望んだ事なのに。




『全て失う』




そう、望んだ今日の結果がコレだっただけで。


望みは確実に叶ったんだ。




もう、先生に迷惑はかけない。


解放してあげられた。



もう、高杉を欲望のはけ口にしない。


利用するのは終わりだ。



ただ結末が。


先生からは軽蔑されていて。


高杉からは利用される側になっただけ。



なのにこんなに寒い。


冷えた指先は感覚が無い。


震える唇は水気を失って擦れる度に痛みを伴った。


頬を流れる涙もただの冷えた液体。



心が凍ってしまった自分に、熱が通わない。




ーー早く。



ーー早く。



ーー温めて。




もうそうしてくれる存在は誰も居ない。

嘘だらけの温度でも構わないと貪った熱は心を冷やすだけ。


愛されたいだなんて望んだ自分が悪いのだ。


愛していたいだなんて望んだ自分が悪いのだ。




ーー早く。



ーー早く。



この自己嫌悪の支配から卒業してしまわなければ。



後数ヶ月も無いこの高校生でいられる時間を無駄にするなんて勿体無い。


この馬鹿な片想いの結末を。

ただ失恋しただけで。

セックスを覚えただけだ。


なんて思えれば、こんなものどこにでも転がっている青春の1ページだと、陳腐な思い出として処理できるのだから。



そう思え無い自分はまるで廃人のように冷たく固い。




ーー最初で最後の恋。




そんな風に思いつめてしまう。


おかしな話なんだ、実際。


俺がしていたのは『恋人ごっこ』なのだから。


初めから傷付く資格さえ持っていなかったのに。



ただの片想いが。


ただ、終わっただけなんだ。


もう取り返しのつかない結末で。



ただ、俺は雨に濡れて震えてる。

雨に濡れたから頬を滑る水滴を涙だと勘違いしているんだ。




ーー早く。



誰に、何を求めている?




ーー早く。



自分に、何を求めてる?



薄い布団に包まって強く目を閉じてしまおう。


このまま意識を手放してしまえばきっと朝が来て、新しい一日が自分を迎えてくれる。




ーー早く。



ーー早く。




ーー卒業、したい。




貴方の姿は。



もう、見たく無い。





 
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