夢屋

□夢屋
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ほう…君の夢ってそんなもん?

まぁ…人間って所詮こんなもんか

いいよ 叶えてあげる

そのかわり


貴方の『夢』と僕の『夢』
交換しましょう

覚悟はいいですか?



【夢屋】



「あのっ…本当に?」
そう話しかけたのは高い声。
不安げな顔をして目の前に座っている少年に問い掛けた。
「叶うんですよね?私の女優になる『夢』」
「えぇもちろん」
少年はブルーの瞳を閉じて言った。
「その…貴方の『夢』ってなんですか?」
「それは教えられません。そのかわり、『夢』は必ず叶います。ね?マキト君?」
少年が問い掛けた方には背の高い青年がいた。
「はい」
その青年は低く答えた。
その瞬間、先程の女性が顔色を変えたて、慌てだした。
「まさか…、マ…『マキト』って…あの伝説の美声俳優マキト様ですか!?」
「おっそうさ」

その声はまさに歌姫からの贈り物
この声を聴いたらみなが振り向く
人間の心を、力を変えてしまうような伝説の美声俳優『マキト』
しかし、その美声ゆえ姿を現したことはない

「この声を完成させたのは僕だ。もちろん、彼の声の眠っていた才能を起こしただけだけどね」
少年は淡々と語った。
それを聞いた女性はマキトに向かって話しかけようとする。
「あっあの…マキト様」
「あーーダメダメ」
その声を遮るように少年は言う。
「この子、人間と三口以上話すと声がなくなっちゃうから会話は控えてほしい」
すると女性は黙ってしまった。
「で、『夢』なんだけど、一つだけ教えてあげよう」

貴方の夢は
何かを叶えたい
願望の夢

僕の夢は
寝る時に勝手に現れる
迷惑な夢

「やっぱり、夢のためにはそれなりの苦労を…」
少年は声色を変えて言った。
「どうします?」
「お願いします!頑張ります!」
女性がはっきりこたえると少年はニッコリ笑った。

「承りました。今晩の夢からが、貴方の夢の始まりです」
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