Drama&Movie

□再会
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…逢いたくて。

…逢いたくて。

ずっと、ずっと。逢いたくて。

あなたに…逢いたくて。

逢いたくて逢いたくて、たまらなくて。


それなのに。

…逢えなくて。

電話もメールも繋がらなくて。

逢えないことが…寂しくて、悲しくて。

けれど…私にはどうすることも出来なくて。

それがまた、悲しくて。辛くて。

一人、泣いた夜もあったの。


…だから。

また。

あなたに。

…出逢えたとき。


私は…夢かと思ったの。

二年ぶりに見るあなたの姿は、眩しいほどに、素敵すぎて。


私は、また―

あなたを思い出した。

失いかけていた…心を。気持ちを。

取り戻した。想いを。


……私は。やっぱり。


あなたが好き、ということを…―


*****


私がライアーゲームの四回戦に進むことを決意した、その日。

乗ったバスから降ろされた場所、つまりゲーム会場は…

いかにも“あのゲーム”らしさを思わせる恐々とした場所だった。

中は薄暗く…そして転んだ私の目の前に居たのは。

…明らかに私を敵視する…男性二人と、女性一人。


――そう、今再び私の…そして彼の、戦いの火蓋が切って落とされたのだった。


座り込む私を、やや上の角度から凝視する彼等。

その視線が怖くてたまらず、私は来たばかりだというのにもう既に逃げ出してしまいたくなった。

誰か…誰か…そう思った。

そのとき、だった。


「…直ちゃん?」


この声は。

私は反射的に振り向いた。そこに居たのは…


「福永さん!!」


そう、きのこヘアがトレードマークの彼…福永さんだった。

彼とは、二回戦から敗者復活戦、更に三回戦まで何度も騙されたことがあったのだが。

…今の私にとって、彼は知人という見知った人間だったので、すぐに嬉しさがこみ上げてきた。

私は笑顔で彼の元へ駆け寄る。


「わぁーわぁー!!」

「福永さんだぁー!!」


私と彼は手を取り合い、再会を喜びあった。


「わぁ良かった!直ちゃんと同じチームなんだぁ!」

「…?同じチーム?」


なんのこと、だろう。私は首を傾げた。


「あれ?…直ちゃん聞いてないの?今回は3対3の団体戦だって」

「…3対3?

ってことは、もう一人は…」


…そのときだった。



「―……何でお前がここに居る」


この、声。

冷ややかで…冷徹な響きを帯びた、耳に心地良く響く低い声。

私は思わず振り返った。


青白い光に照らされる…その、影は。

二年前の、あの姿。

愛しくて、愛しくて…ずっと会いたかった、彼の姿だった。


―そう。

現れた彼の名は…


―――秋山深一。


「秋山さん!」


二年ぶりに彼の姿を見て。

私はずっと会えなかった苦しみだとか切なさだとか…そんなものよりかは。


…もう一度、出会えた嬉しさ。

ただそれだけ、だった。


だからこそ、私は笑みを浮かべて彼の元に駆け寄ることが出来たのだ。


「棄権する筈じゃなかったのか?」


…そう。私はこのゲームに参加する。

彼の声と共に、その事実が…重くのしかかる。

…けれど。私は、決めたのだ。


「…はい。でも、私にはまだやることがあるって気付いたんです」


二年前の様に、騙されて簡単に泣いたりはしない。

私は…この恐ろしい世界で、私に出来ることを。

こんな私でも、救える人が居るのなら。

…私は、闘う。


私は、強く在れる様に…気をしっかり保てる様に…

まるで、決意表明の様にそう答えた。

彼から見たら、私は相変わらず弱く見えているのかもしれないけれど。

そして、私は疑問を口に出した。


「秋山さんこそ、どうしてここに……?」

「…俺もだ。

俺達は全てを知ったわけじゃ無かったんだ」


…私は、彼の強さを再び噛みしめた。

彼は誰よりも…このゲームを憎み、このゲームを開催した“LGT事務局”を恨んでいる。

それが…その想いが、彼の強さとなる。私とは、私などとは…根幹が違うのだ。

二年前と何ら変わることのない、その強さ。そして…私はその強さに惹かれた。

惹かれ…そして、守られた。何度も、何度も…


「秋山、さん…」


…駄目だ。

やっぱり、涙が零れてしまいそうになる。

彼の心に…私という存在は、もう居ないのだろうか。


「…直」


彼が、私の名を口にした。…それだけ、じゃなかった。

するりと彼の片手が私の背中へと伸び…

私を、抱き寄せた。


「…っ!?秋山、さん…?」


私はいきなりのことに、思わず顔を赤らめた。

二年前と、同じ…変わることのない、温もり。

分かってる。彼の本当の…優しさは、この温もりと同じ、なのだ。


「……長い間、待たせた」


それだけ。

…たった、それだけで。

彼の、想いが伝わった気がした。


…大丈夫。

彼の心の中に…ちゃんと、まだ私という存在はあったのだ。

そして彼は…


たった、一言で…私の心を奪ってしまった。もう一度。

私は…奪われた。

…ならば。それならば、私は。


「…はい」


もう一度…あなたを愛する。

大好きで、愛しくてたまらない…あなたを。

二年という長くも短い年月のうち、いつの間にか風化してしまった、あなたへの心を。


…取り戻した。あなた自身の言葉によって。


「…もう、二度と離さない」


そんなこと、言わなくても分かってるのに…

私は…あなたのものだということ。

もう一度、私はうなずく。


…大好きです。

大好きです……秋山さん。

好きで、好きで…たまらなくて。


―だからこそ。


今再び、始まろうとしているこの恐ろしいゲームも…

…何も、怖くなんてない。何も。


―…あなたが傍に、居てくれるのなら。
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