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□俺のもの
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「……直」


声に出して、囁く。

愛しい、名。

それはまるで、呪いの様に。

けれど彼女には、そんな言葉はおよそ似つかわしくない。

彼女は…

ただただ、純粋で、無垢で。

綺麗すぎるほどの、心の持ち主。


「…はい?」


俺の方に顔を見上げる。

その顔には優しい微笑み。

…何故、君はいつだってそんな笑顔なんだろう。

そう。

この…彼女の、笑顔に。

何度救われたことか。


「…好きだ」


迷いも、躊躇もなく。

ただ、その言葉を。

愛の言葉を…述べる。

彼女の前では、短く、シンプルな方がいい。

…でないと、君は鈍すぎて気付かないときがあるから。


「……私もです」


欲しかった言葉を、こんなにもいともあっさりと。

彼女は、くれた。…俺に。

笑顔は…真っ赤な、表情へと。


「なら、君は」


…言ったら、君は俺を嫌うかな。

彼女のその、穢れ無き心が。

俺で、穢れてしまうかもしれない…から。

俺が、汚してしまう…彼女を。

それは、きっと罪だ。

…けれど。

今まで、彼女にはずっと、待たされてきたんだ。

もう。これ以上。

…抑えられる、わけがないだろ。


「…俺のものだ」


赤い顔が、ますます真っ赤になった。

君は…こんな俺でも。

受け止めて、くれるだろうか。


「…分かってます」


大好き、だ。

改めて、それを分からせられる。

何の躊躇も無く、俺を受け入れてくれたのだから。

最低、かもしれない。

心のどこかでは、分かってたことだから。

彼女は俺を、拒むことは無いのだと。


「だったら……」


本当に…最低、だな。

10秒後、俺は必ず―


「…だった、ら?」


赤い顔で、俺の言葉を繰り返す。

俺はニヤリ、と不敵な笑みを浮かべて見せた。



……君に何しようが、俺の勝手だ。



→あとがき
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