Other dream

□留守番
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「危ねー事するから、お前は此処に居ろ」


高杉がそう言い残して去ってから三日。
放り込まれた下宿屋に1人ぽつんと残された私は、じっと彼の帰りを待っていた。
春雨がどうとか、紅桜がこうとか、
そんな単語が最近よく聞こえていた事から、今高杉がやっている事は大方予測できる。

取り残されたからと言って、決して私が無能と言うわけではない。
これでも一応、鬼兵隊のメンバーだ。

だが、私に戦う能は無い。
今、私に与えられているステータスは鬼兵隊の頭脳という役割と、炊事。
そして、高杉の彼女と言う役割。
この三つだ。
そして、彼女と言えど鬼兵隊のメンバーで有る以上、二人きりの時以外は彼との上下関係も有る。
命令されたら逆らえない。
さもなくば消される。
…と言うことは有り得ないのだが、やはり彼女としてはもう少し傍に置いておいて欲しいものだ。
一人は寂しい。

…甘味屋さんにでも行こうか…

そう考えて思いなおす。
以前、留守番中にちょっと家を開けた隙に彼が帰ってきて大目玉を喰らった覚えが有るからだ。

…暇だ…
物凄く暇だ。
暇すぎる。

しかし、この私が退屈している時間にも彼は危険にさらされているのだと思うとやはり、彼なりの優しさを感じる。


「ふふっ…」


愛されている。
そう思った途端に思わず零れた笑み。
早く帰ってこないかなぁ…
さっきの退屈さとは打って変わって幸せな感情に浸りながら、高杉の帰りを待つ。

腹に傷を負った彼が帰ってくる、三時間前の事だった。





-留守番-

(帰ってきたら)
(助走をつけて抱きついてやろう)











2010.05.03(Mon)
by遊鵜

映画、新訳紅桜篇を見て

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