真選組

□ラムネなんぞ数年ぶりに飲んだわ
1ページ/2ページ


襖から零れる日差しと外から聞こえてくる雀の声に、まだ重い瞼を開ける。
薄っぺらく冷たい布団の感触ではなく冷たく固い机の感触に、結局徹夜をし寝落ちしたのだと納得し身体を伸ばす様に起こす。

「昨日の嵐が嘘みたいだな」

叩きつける様な雨音と、獣の遠吠えの様な強風だった昨夜が嘘の様に、今朝の外は静かだった。
側にあったタバコに火を付け目覚めの一服をした後机に置いてある時計を見ればまだ五時を少し回った時間で朝餉までまだ随分と時間がある。

「二度寝って気分でもねぇし、ちょっくら外の空気でも吸ってくるか」

軋む身体をゆっくりと伸ばしながら障子を開けると何処からか飛んできたゴミや葉っぱの中心にその人がいた。
紺色の羽織に深緑の寝巻き、背中まで流れる黒髪はまさしく、我らが局長。

「こ、近藤さん!?何してんだ!」
「ん?よう、トシおはよさん。早起きだなぁ」
「あ、あぁ、目が覚めちまって…っかそれより何してんだ、あんたは」
「ンフフ、宝探しさ」
「…は?」
「昨日風凄かったろ?建物も揺れた瞬間もあったし、だから何か『お宝』が飛んできたかもしれねぇだろ?」

要するに風に乗って高価な物が落ちてるかもしれないから探してるって事か。

「…ガキかあんた…そもそもあんな風ぐらいでそんな高価なもんが飛んで来るわけないだろ」
「ロマンがないなぁ〜トシ。別に高価じゃなくていーんだよ、価値は拾った奴の自由さ」

見つけてもトシには教えててやーらない!っと可愛く拗ねた彼女は此方に背を向け、探すのを再開し始める。
ここに総悟がいたら、アイツも一緒になって探し始めるだろうなぁ、と思うとなんかムカついてきた。

「拗ねるなよ近藤さん、悪かった俺も探すの手伝ってやるよ」
「お、トシも興味が湧いてきたか?よしよし、じゃあトシはアッチな俺はアッチ見てくるから」

別に興味が湧いた訳じゃなく単純にあんたと一緒に居たかったから、何て言葉は心に留めておく。
近藤さんに指示された通りの場所を探すがめぼしい物はない。
本当にただのゴミばかりだ。

「近藤さん、こっちには何もないぜ」
「早ッ!お前、まだ一分もたってないよ!?キチンと探したのか?」

俺の隣にしゃがみ木の棒で葉っぱやゴミを避けていく。

「あ、ホラ、お宝発見!」
「…お宝って…ビー玉じゃねぇか」

近藤さんが摘み上げたのはラムネ瓶に入っているビー玉だ。
色も無く透明のそれは太陽の光を反射させキラキラと光っている。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ