短編 銀新

□家庭的な子ってやっぱポイント高いよね
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飽きもせず見続けていたら、新八がキョトンとした顔で聞いてきた。

「そんなに珍しいですか?」
「あぁ?まぁ、な。今ってあんまり裁縫する奴って見ねーし」

使えなくなったら新しい物に変える時代だ。
わざわざ直す奴なんていない。
一昔前だったら見慣れた光景も、今じゃ余り見かけない。
時代の流れってやつか。

「それ、あんたの為に裁縫する女がいなかったって言ってるのと一緒ですよ」
「いやいや、銀さんの為にする女は沢山いるよ。ベッドの上でご奉仕とか」
「それ以上言ったらその口縫いますよ」
「すんませんでしたぁ!!」


キラリと光る縫い針と新八の笑ってない目に慌ててソファの上で土下座したら、「全く…」と呆れたため息をこぼし再開する。
伏せられた目とか、襟から覗く首とかいいなぁとか危ない事を思いながら黙って見つめていた。

いいな、いいな。
コイツいいなぁ。

『面倒くさくねぇの?』
『面倒だったら、自分から言いませんよ』

好いた男のならいざ知れず、赤の他人の男の着物を面倒くさいと思わず繕ってくれる。
いいな、欲しいな―――…って!何だよ欲しいなって!!


「あんたの為に裁縫してくれる人現れるまで私が縫ってあげますよ」
「へ?」


頭の中の言葉が漏れてたのかと思った。
呟かれた言葉に新八の手元から顔を上げると新八がふわりと笑う。
トクンと心臓が鳴った。
え?え?何今の?何?トクンって!!

「あ、鋏無い」

顔を真っ赤に染め、悶えてた俺は新八の次の攻撃に完全に停止した。

そっと着物に唇を寄せる新八の行動に逃げ出したい衝動に駆られる。
解ってる解ってるってコレは鋏がないから、犬歯で切ってるだけで他意は無いし!!って他意ってなんだ俺ええぇぇええ!!!

「はい、出来ましたよ銀さん」
「お、おぉ、ありがとーな…」

ほつれが無いか確認して満足そうに差し出された着物を受け取る。

「じゃあ夕飯の準備しますね」

裁縫箱を抱え和室に向かう姿を見送り、渡された着物を見る。
袖を持ち上げると先程の光景が目に浮かび顔に熱が集まる。

「あ〜ちくしょー」

ガリガリと頭を掻く、たった三週間で心奪われちまうってどうよ。
しかも一回りも違う乳クセェガキにだぜ?本当…。

「…まぁ…仕方ねぇよな」

惚れちまったもんはしょうがねぇと諦めそっと、袖に唇を寄せた。


end
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