☆  廃墟の読書倉庫  ☆


□FORTUNE ARTERIAL ver.1
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「こーへー!」

ん、眠い...

ここは修智館学院学生寮、支倉孝平の部屋である

今は5月、
夏も本番にさしかかっているというのに、肌寒い気がした

ふと時計に目をやる
針は6時30分を示していた
早朝である

「こーへー!居ないのー?」

しかし、そんな早朝にも関わらず扉の前では、
我らが学生寮寮長、悠木かなでの声が聞こえてきた
まさしく近所迷惑と呼ぶにふさわしい声量だった

「もー、合い鍵もらったし、勝手に入っちゃうからねー?」

「ぇ、ちょ、待って下さい!」

衝撃の事実に孝平は飛び上がった
『何で合い鍵もってんの?!』という当人の心境をガン無視し、
かなでのガチャガチャと鍵を鍵穴につっこんでいる音が聞こえてくる

「やっほー!こーへー!朝だぞー、起っきろー!」

無造作に開けられた扉から、元気メーターが全開のかなでが登場する
彼女の元気は年中無休のようだ

「いや、もう起きましたよ...
 それより何でこんな時間に、ていうか合い鍵はドコから...」

ねぐせを手ぐしで直しながらかなでに問いかける
まだ眠気は残っているが、大部分はかなでにすっとばされた

「あー、はいはい、細かい事気にしてるとモテないよ?
 あ、でも、こーへーにはえりりんが居るもんね!」

「そ、そうですけど...」

千堂瑛里華と支倉孝平の仲は、すでに学院中に知れ渡っている
現生徒会長、千堂伊織が開催した
『生徒会主催!ベストカップルは誰だ!IN、修智館学院!』
というコンテストを開催し、
半ば強引に参加させられた瑛里華と孝平は
みごと3位を勝ち取ったのだ

しかしこの話はまた別の機会に

「で、どうしたんですか?こんな早くに」

「へ?何が?」

まさかの聞き返された

「いや、『何が』じゃなくて、何か用事があったんじゃ...」

「あ、そうだった!こーへー!外見て外!」

どこか抜けている頼りがいのある寮長だ
ゆっくりと体を持ち上げ、寒さをこらえながら窓へ進む、

そう、5月に「寒い」という表現が当てはまる

窓を閉ざしていたカーテンを開ける

「え...、何コレ...」

「ねー!すっごいよねー!」

孝平の視界に広がっていたのは...

「こんな時期に雪が降るなんて、流石の私もビックリだよ!」

学院一面に積もった、雪、雪、雪、の銀世界だった

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