‡豊玉発句集‡

□memory(制作中)
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「ふたりとも待たせたね。ほらっ、千景挨拶しなさい」

「全然待ってないわよ。久しぶりね千景くん」

いつの間にかリビングに帰ってきていた父。その隣には…

「お久しぶりです」

学園の顔である生徒会長の風間千景が悠然と立っていた。

その顔を見た瞬間、少しだけ“俺はまだ夢を見ているはずだ”と現実逃避に走っていた 。




「…………」

「…………」

現在、この家にいるのは俺と風間のふたりっきりだ。
母が再婚と引っ越し祝いも兼ねて夕食を張り切って作ると言い出したが冷蔵庫を開けたところ、中身が空っぽだったらしい。そのため父と母は買い物に出掛けてしまった。
そのため現在、ふたりっきりとなりとても気まずい時間を過ごしている。

風間は俺に背をむけソファに腰掛けテレビを見ていた。
気まずいと感じているはずなのに自分の部屋にもどらないんだろうか…とか風間もテレビを見るんだな…等とその背中を見ながら考えているといきなり風間から話かけられた。

「…まさかお前の母親だったとはな」

風間は俺に背を向けながら話続けた。

「お前はこの再婚に賛成したのか」

「あぁ。あの人なら母を大切にしてくれると感じたからな」

「…俺とお前が兄弟になっても…いいのか」

「…それはどういう意味だ」

「…………」

風間はソファから立ち上がるとリビングから出て行ってしまった…その際も風間の顔は見れず俺は彼奴の背中を見送るしかなかった。

「なんだったんだいったい」

その後、両親が帰ってきても風間は部屋から出て来なかった。終いには母親が腕によりをかけて作った料理もいらないと言い食べなかったのである。

「…やっぱり千景君は私が母親になるのが嫌なのかしら」

寂しそうにそう呟く母親を見て俺は悲しくなり又、風間に対しての怒りが溢れてきた。

「そんなことないよ。君のことを話したときに千景は私によかったなと一言いってくれたんだから…少し千景と話をしてくるよ」

「…待って下さい」

父親が立ち上がり、風間の部屋へ行こうとしているのを俺は止めると自分が立ち上がる。

「俺が話してきます。もしかしたら、俺のほうが話しやすいこともあるかもしれませんし」

そんなことあるわけないと思ったが、この場合は仕方がない。
この時、風間が自分の思いを父親に話すとは到底思えなかった。さらに、父が俺の母親のことを話したときに“良かった”と一言でも言ったならば母親に対しては少なからず、悪い印象はないんだと思われる。それに風間の性格なら嫌なものは嫌だと自分の父親にもはっきりと言うはずだから…。そう考えると、風間が嫌だと思うこと又は納得いっていないこと…それは俺の母親のことではなく、俺自身のことだと結論づけられる。
だから、風間は俺と一緒の空間を嫌がり食事を共にしなかったと考えられた。
まったく、今日ぐらい我慢をすればいいものを…子供か彼奴は…。


「…千景…くん…の部屋はどこですか」

「2階の一番奧だよ。頼むね一くん」

「わかりました」
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