‡豊玉発句集‡

□死蝶
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日も沈みきり辺りを暗闇が覆う、それと同時に京の都にも静寂が訪れた。
いつも賑やかな新選組隊士達もいまは一時の休息に入り、屯所内も静けさに包まれている。
そんな中、新選組の屯所へ向かう者がひとり。
新選組とは敵対関係にある薩摩藩の協力者そして、鬼の頭領でもある風間千景その人だ。

今回は奇襲ではなく、ある人物に会いに行くのが風間の目的であった。


屯所に着くなり風間は門番をしていた隊士を斬りこみ、隊士は声を出す暇もなく地に平伏すこととなった。

「…彼奴の寝床はどこだ」

易々と屯所内へ侵入したのはいいが、訪ね人がどこで寝ているか分からない…しかし、風間はそんなこと関係ないとばかりに屯所内を我が物顔で歩く。
気配を消しながら、幾分か歩いていると明かりが灯る部屋が見えてきた。近付くと中から人の気配を感じ、それと同時にゴホッゴホッと咳き込む声が聞こえる。
風間はその部屋の前まで来ると勢いよく障子を開けた。
そこには新選組一番組組長沖田総司の姿があった。
沖田は風間の気配に 気付いていたのか右手にはしっかりと刀を握り締め身構えていた。
「珍しい訪問客だね。夜這いにでも来たのかな…もしそうなら、部屋違うんじゃない」

いつものように笑みを称え、どこか人を小馬鹿にしたような物言いで風間に問いかけるも、そこにはいつもの覇気がないように感じられる。
風間はそんな沖田の問いには応えずただ黙って沖田を見ていた。

「…なに?あまり見つめられても困るんだけど」

風間が攻撃を仕掛けてこないと感じた沖田は構えていた刀を下ろした。
だからといって沖田は隙を見せない。いつ風間が攻撃してきても対処出来るように刀を鞘には戻さなずに相手を見る。
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