‡豊玉発句集‡
□雨音
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隊士たちも寝静まった時間帯、自室の縁側に座り外を眺めつつ一杯と…杯を傾ける。
夕刻を過ぎたあたりから雨が降り始めたが、俺はあまり雨が好きじゃない。しかし、何故か今日は嫌な気がしない。
それは隣にいる此奴のおかげなのかもしれないな。
隣を見ると風間が酒の入った杯を口元に持っていこうとしている所だった。
先程まで部屋でふたりで飲んでいたのだが、風間が外に出て飲みたいと言い出し一度言い出したら引かない風間の性格を知っている俺はその我が儘に付き合うことにした…そして、今に至るわけだ。
所謂、俺と風間は恋仲である。他の隊士たちは誰もしらない…秘密の恋人だ。
風間は隊士達が寝静まった時間帯にふらっと現れては俺との逢瀬を楽しんでいる。だが、今まで雨の中わざわざ会いに来ることはなかった。だから正直、今日風間が来たときは驚いた。
「なぁ、風間」
「んっ」
唇から杯を離し俺を見る風間。
酒を飲んでいることからうっすらと朱に染まっている目元やさっきまで口付けていた酒で濡れている唇を見た瞬間、俺の体が一瞬にして熱くなった。
「風間」
もう一度名前を呼び風間が持っていた杯をその場に置き、風間の体を引き寄せる。
「原田」
少し戸惑い気味に名前を呼ばれ、風間が動揺していることがわかる。
「今日はなんで雨の中、わざわざ来てくれたんだ」
風間を抱き締めながら問うと、少し考えた後に小さな声で答えをくれた。
「…雨を見ていたら、お前が雨をあまり好きじゃないと言っていたのを思い出したんだ」
「………」
「だから少しでもお前の気が紛れるなら会いに行こうと……それに俺も原田に逢いたくて…我慢できなかった…んっ」
その答えを聞いた瞬間、俺は風間に口付けていた。
愛おしい俺の風間。
気持ちが溢れんばかりの口付けを風間に仕掛ける。
「んぅ…あっ…」
啄むようにしていた口付けがいつの間にか舌が入り込み口腔内を蹂躙する。
「…んっ…」
口付けの合間に聞こえる風間の甘い吐息に否応なく俺の体の熱は上がっていく。
「風間、愛してる」
唇を離しきつく風間を抱き締めると風間も俺の背に腕を回し俺の肩に頬を擦り寄せる。
「…俺もだ」
チラッと風間を見ると赤くなっているであろう顔を見られたくないのか、俺の肩で顔を隠している。しかし、耳元まで真っ赤のは隠せていない。
少しだけ体を離し、真っ赤になっている耳を甘噛みする。
「あっ…や、やめ…んぁ」
甘噛みしながらも風間の着物の間から手を差し入れ胸にある赤い果実に触れる。触れた瞬間、風間の体が跳ねた。
「は…原田…んっ、まっ…て」
「どうした」
硬くなっていく果実へ愛撫しながら、風間の言葉の続きをまつ。
「んっ…ここ、じゃ…いや…だぁ」
そういえばここは自室の前の縁側だった。唯でさえ恥ずかしがり屋な風間がいつ隊士に気づかれるか分からないこの場所でこの続きを許してくれる訳もなく…もしこのまま風間の意見を無視して続ければ、終わった後に烈火の如く風間は怒るだろう。
それは頂けないな。
風間の意図を考慮した原田は風間を抱き上げる。
「は、原田」
反射的にぎゅっと抱きついてくる風間に可愛いなぁと思いつつ、チュッと風間の唇を口付ける。
「部屋に戻るか。俺もこんな可愛らしい風間を他の奴には見せたくないしな」
「…か…可愛らしくなどない」
「俺にとっては風間が一番可愛らしいし、愛おしいんだよ」
その言葉を聞いた風間は少し考えてから俺を見てきた。
そして…
「んっ!」
風間から俺に口付けてきた。それは触れるだけのものだったが、俺にとっては初めての出来事であり衝撃的だった。
「か、風間」
「…今日だけだからな」
そう言うと顔を背けてしまったが照れているだけだと分かっているから、その行動さえも愛らしく感じる。
「愛してる千景」
「…知ってる」
そう言い更に風間はぎゅっと抱きついてくる。その言動に愛しさは募るばかりで…我慢の限界に達した俺はそのままは部屋に戻り、朝方まで風間と共に過ごした。
朝、目が覚めると隣には風間が安心しきったような顔でまだ寝ていた。毎回、風間の寝顔を見るたびに無意識に甘えているんだと感じて幸せを感じる。
風間の寝顔から一端、視線をはずし外に向ける。
どうやら昨晩まで降っていた雨はやんでいるようだ。
やっぱり今でも俺は晴れている方が好きだ。
でも
風間が隣にいてくれるなら
雨も好きになれるかもしれない。
======= あとがき
久々の原ちかでした!沖縄が梅雨入りしたと聞いて雨関連でなにか書けないかと思い、これを作りました。でも蓋を開けてみれば全然、雨関係なくなってたよ;
まぁ、甘々な原ちか書けたからいいやっ(笑)
こんな主でスミマセン\(^^)/