‡豊玉発句集‡

□memory(制作中)
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俺には兄がいる。
ひとつ年上で学園では生徒会長をしている。眉目秀麗で頭もいい…だが、性格に関しては一癖も二癖もある兄だ。


そんな兄と俺の血は繋がっていない。


俺の父親は俺が10歳のときに交通事故で死んでしまった。母親は父と死別して以来、女手ひとつで俺を大切に育ててくれた。
そんな母が、俺が高校2年に上がった4月にひとりの男性を紹介してきた…それがいまの父親だ。
新しい父は前の父と似ていて優しく大らかな人だ。血がつながっていない俺にも優しく接してくれ、父と母と俺の3人でレストランで食事をしていた席で父から再婚したいと考えていると告げられた時にはとても嬉しかった。
俺が“母を宜しくお願いします”と言った時にはふたりともとても喜んでおり、父も母も俺に向かって何度もありがとと言ってきた。
そのふたりを見て俺は母がいいひとと巡り会うことができ、本当に良かったと思った。
そして、その食事会も終了間近になった頃、新しい父にも息子がいることを告げられた。俺にとっては初耳だったが、母親は勿論知っておりとても綺麗な子なのよ!と興奮気味に言ってきた。その興奮気味な母親の姿に少し引いてしまったが、あの時もう少し食いつき詳しく聞いとけば良かったといまになっては後悔している。
だが、まさかあの人が俺の兄になるなんて思ってもみなかったんだからいまさら後悔しても仕方ないのかもしれない。
5月に入ってはじめの週の日曜日に俺と母は今まで住んでいたマンションから、新しい父親の家に引っ越しをした。
父親の家はとても大きく母親とふたりしてとても驚き玄関で呆然としてしまった。母がお掃除が大変そうねと呟くと母の隣にいた父親が盛大に笑っていた。

「そんなこと言うのは君が初めてだよ!さぁ、ふたりとも遠慮せずにあがってくれ」

「…はい」
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