HP小説

□平和通りの何でも屋さん:3
1ページ/23ページ







 如月は、背中越しに伝わる体温にひたすら呼び掛けた。

「頑張って!もうすぐ着くからね!」
「筧くん、こっちだよ」

 密に案内され、如月と篠綾も閑静な商店街を抜け、広い道に出た。そこに、『まちの病院“こころ”』と書かれた木の掛け札が下がったドアが目に入る。下を向いていたため、建物全体を見るために顔を上げた。

「すみません!急患です!」

 如月はドアを激しくノックし、叫んだ。近所迷惑になるだろうという考えはすっぽり抜け落ちている。
 反応が無いので再度ノックしようと手を振り上げたとき、ガチャリとドアが開いた。

「何か……?」

 眠たそうに目を擦った桃色の髪の少女が出てくる。如月は背中の丹を背負い直して、少女に声をかけた。

「あ、あの……急患です!」
「…!大変、ドクター!」

 背負われた丹の顔色が唯事ではないと気が付いたのか、少女は叫びながら室内へと消えていく。入れ違いで現れた銀髪の少年が、4人を中に招き入れる。

「患者さんをこっちに……!」

 如月を見て、少年は部屋のドアの方を指差す。

「……この時間に生きた患者か。珍しいな」

 ドアの向こうに居たのは、闇色の髪に金の瞳を持った、恐ろしく顔色の悪い男だった。





†平和通りの何でも屋さん†
第3話:解体屋家族







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ