駄菓子屋松金─マツガネ─

□後日談
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僕らの町A



カノヤが来てくれてからと言うもの、俺の店は沢山の子供が来るようになった。
や、元々子供は沢山来てたんだけど、何というか……

彼らの年齢の幅が広がった。


「あ、駄菓子屋のあんちゃん。丁度良い所に。さくら大根」

「……………」


今、目の前に居るのは、愛国護民特別刑務部隊隊長の、又傘麗雨ちゃん。
本来国民を守るために日々訓練をし、今だって恐らく町の見回りをするか、事件や事故の事後処理をしなければならないだろうに、彼女は巡回と云う名のサボリを展開している。

彼女はまだ17歳。28年生きている俺にとっては、コイツはガキだ。
正直に言う。彼女はサボリのポイントに此処を選んでいる。そして俺は、それに気付いておきながら見て見ぬ振りをして、さくら大根を売っている。

麗雨ちゃんはさくら大根をポリポリと食べながら、何やら話し始めた。


「昨日、銀行強盗と一戦交えての。何じゃ、最近の若モンは芯が有る者が居らんきに。あんちゃん、わしと手合わせ願えねェかい?」

「はぁ?」


コイツ、俺に喧嘩売ってんの?

つーか最近の若者って、アンタも充分含まれるからね?

何処から目線でものを言ってるの、この子は。


「警察が一般人に喧嘩売ってどーすんの」

「違ェ、今は愛護の麗雨じゃのぉて、又傘麗雨として手合わせ願いてェって話で…」


いつも無表情の彼女がムキになって突っ掛かってくる。初めて年相応な姿を見た気がした。


「銀行強盗にもビビること無しにそれを投げ飛ばすなんざァ、一般人には出来ねェしょ…だから……」

「…あー、成る程ねェ。弱い奴ばっかりじゃ物足りないから、強い奴と戦りたいってわけ」


俺がそう言うと、彼女は頷いた。

…なんて物騒なガキだ。つーかコイツの部下と上司は何してんだ?早く引き取るなりして仕事させれば良いのに。

あぁ、ダメだ面倒臭い。


「お前の上司でも殴っとけ。俺は庶民代表なの。庶民の言うことしか聞けませーん」

「ケチんぼ!」


彼女は口を尖らせた。うん、そういう年相応な仕草はすごく可愛い。オッサンの目から見てもそれは頷けるよ。


「隊長〜!」


その時、苦労性の部下がやってきた。


「またこんなトコでサボって!総隊長がお怒りですよ!」

「はいはい、ちょっと休憩してただけっしょ」

「アンタのちょっとは長いんだよ


そんなこんなで、彼女は引き摺られていった。

俺は彼女が食べたさくら大根のゴミを捨てながら、店の中で子供と戯れるカノヤを見る。

やっぱり子供は無邪気なのが一番だ。





そんな子供が国を護っているのも事実だけど



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×国を護る者×後日談です。

常磐は多分、麗雨を娘みたいな、なんか保護の対象として見てると思います。
そんな子供が国を護るような仕事をしてるのが、何となく気に入らないんです。




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