青い春に伸びる影

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桜が散って、アスファルトにその花を咲かせ、新学期の始まりを告げた。生徒会執行部は、入学式を取り仕切り、これから帰宅するところだった。

「お疲れ、皆。休日だってのにご苦労さんって感じだよね」

生徒会長の長尾七海(ながお ななみ)は後ろを振り返り、生徒会メンバーの顔を見る。その中の一人、副会長の新玉玲奈(にいごく れな)が苦笑しながら返す。

「まぁ生徒会だから仕方ないじゃない? この後皆はどうするの? 真っすぐ帰る?」
「あ、お嬢ん家行きたーい!」

玲奈の言葉に、七海は大きく手を振りながら叫ぶ。すると、書記の田邊花(たなべ はな)も頷いた。

「私もお嬢ん家行きたい! あの二次元チックな広い家に!」
「うるさいなぁイタ子は。私はパスね。今日は帰って寝る〜」

花に呆れながら、会計の金城涼華(きんじょう りょうか)は手をひらひらと振り、さっさと歩き出した。実は朝から何となく体が怠かった。それを知っているメンバーは、お大事にね、と声をかけながら、玲奈が呼んだ車に乗っていく。


(送ってもらえば良かった)


帰り道、涼華は思った。
思ったより体調は思わしくなく、正直歩くのも億劫だった。その時、肩を誰かに掴まれた。

「何………」

不機嫌丸出しで振り向くと、チャラチャラとピアスをし、髪を奇抜な色に加工した男が数人立っていた。こんな街中でナンパに遇うとは、と涼華はうんざりする。

「おっ、美少女発見♪」
「でかしたじゃん」

具合悪いのに、と思いながら無視していると、「無視かよ」と明らかに苛立ちを含んだ声が返ってくる。涼華はどう切り抜けようかと思案したが、体調の悪さもあって頭がうまく回らなかった。
いよいよ痺れを切らした男の一人が、涼華の胸ぐらを掴もうとしたとき、後ろの方で悲鳴が聞こえた。

「ぐわっ」
「来い!」

変な悲鳴の後に、男がバタバタと倒れていく。それをぼうっと見ていると、不意に誰かに腕を引っ張られた。思わずよろめくと、手を引かれて走りだした。

しばらく走り、隠れるようにして立ち止まると、自分の手の先を見た。

「あ……」
「大丈夫か、お前……」

その先に居たのは、日の光を反射して光る金髪を持った、長身の少女だった。自分と頭二つ分は身長差があるため、涼華は彼女を見上げた。
ぱっと見た感じ、男かと思ったが、彼女のトレーナーに二つの膨らみがあったため、性別を判断できた。涼華は礼を言いながら微笑む。

「あ、ありがとう。助かった」
「…あ、いや…悪い。アタシのことは忘れてくれ」

何故か少女は謝り、涼華の手を振り払うように離すと、バツが悪そうに走り去っていった。残された涼華は、胸がドキドキと高まっているのを感じた。

──この感じ……



一目惚れ、かも。








初恋は、私と同じ“女の子”でした
名前、何ていうんだろう
また会えるのかな?






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