青い春に伸びる影

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色々な君を見てみたい









校内は何となく落ち着きが無く、そわそわとした空気を漂わせていた。カレンダーは4月下旬、つまりゴールデンウィークを目前に控えている。もちろんそれを見逃すはずもなく、涼華は遊弥に尋ねた。

「ゴールデンウィーク空いてる?ねぇねぇ、デート行こうよ、デート!」
「女同士でデートもクソもあるか。悪いがほとんどバイトだよ」

遊弥は苦々しく眉を寄せると、カバンに学習用具をしまっていく。彼女は不良と呼ばれ恐れられては居るが、根は真面目で置き勉もしなければ、授業もサボらないのだ。涼華は不満そうに口を尖らせると、今にも席を立ち上がりそうな遊弥の腰にしがみ付いた。

「1日だけでも良いから!お願い!」

その様子を見ていたクラスメイトは驚きに目を見張る。いつも人を小馬鹿にしたような態度を取る涼華が、他人にあれほど必死に懇願するなんて、と。彼女が今まで恋愛に困っていたところを見たことが無いだけに、衝撃が大きい。
それを知ってか知らずか、遊弥は困ったように頭を掻くと、小さな声で「1日だけな」と呟いた。
それを聞き逃すはずが無い涼華は、嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう!待ち合わせとか、メールするからね!」

今日はバイトなのだという遊弥は、そんな涼華を一瞥して帰っていった。ニコニコと幸せそうに笑う涼華を見て、玲奈は苦笑し、尋ねた。

「涼華、マジなの?ホントに遊弥ちゃんが好きなわけ?」

涼華は更に柔らかく微笑むと、頬に両手をあてながら応えた。

「好きだよ。ライクじゃなくてラブでね」
「………涼華ってレズなの?」

怪訝そうな玲奈に、涼華は眉を寄せる。

「違うよ。私は決して女の子に対して恋愛感情を持つわけじゃない。ゆーちゃんだから好きなの。ゆーちゃんが男だとしても女だとしても、たとえ人外だとしても、私はゆーちゃんに恋をする」

真剣な表情で語る涼華に、玲奈は彼女の遊弥に対する想いが本物であるのを感じた。そして、自分が失礼な質問をしたことを恥じた。

「ご、ごめん。変な事言っちゃって。私、涼華のこと応援するからね。出来ることは協力する」
「マジ?さすがお嬢。でも、お嬢には感謝してるんだよ?お嬢のおかげでゆーちゃんと同じクラスになれたんだもん」

大切な親友の初恋だ。応援しないはずが無いだろう。出来ることなら何だってする。自分で言うのも何だが、代々裕福な家の娘だ。大抵のことは出来るはずだ。と、玲奈は思った。
恋愛に不自由しなかった涼華が、誰かを真剣に好きだと言っている。良い方向に進んでほしいと、願わずには居られない。

「ねぇねぇ!」
「何?」

涼華は玲奈の制服の裾を掴む。

「皆でさ、ゆーちゃんのバイト先に突撃しようよ!」
「行く行く!」

涼華の提案に返事をしたのは玲奈ではなく、いつの間に教室に居たのか、七海と花だった。それに驚きつつも、仲良しな生徒会メンバーはカバンを手に学校を出るのだった。







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