青い春に伸びる影

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更に惚れ直しちゃうよ







「どほぉああああ!!!!」
「どこから出してんのその声……」

突如机に突っ伏し、謎の奇声を上げた七海に、玲奈が素早く反応を返した。七海は掴んだ書類を恨めしそうに眺め、キイイと歯軋りをしながら玲奈に訴えかける。

「毎年思うけどおかしくない!?何でこの学校の各行事の企画って生徒会がやるの!?クラスで話し合えば良いじゃないのさ!!」
「しょうがないじゃん、この学校の方針なんだしさ。それに今年で最後でしょ?頑張ろうよ」

玲奈はため息を吐きながらも、拗ねる七海を宥める。ゴールデンウィークが明け、生徒会執行部の面々は、夏に行われる学校祭の企画書類作りに追われていた。

「ねぇねぇ〜、2年はどう?何か良い案無い?ちなみに予算と日にちは決まってんだけど」

そんな状況を見兼ねたのか、いつも仕事をしない涼華が珍しく後輩たちに話を振った。校内一の美女にいきなり話し掛けられ、後輩たちは赤面して狼狽えた。

「えっ……と、自分は、去年やってたクラス展示はやった方が良いかと……、毎年恒例だし」
「うん、それはそうでしょ。そうじゃなくて、新しい案無い?予算に無理が無くて且つ盛り上がって良い感じの」

涼華が後輩たちを悩殺する勢いの笑顔を浮かべると、もう一人の後輩が手を挙げた。

「俺の中学では、クラス対抗のファッションショーをしてましたよ。お題を決めて、それに添った服をコーディネートする人と、その服を着るモデルを選出して」
「へぇ………」

涼華は考え込む素振りを見せた。

(うわぁ…凄くやりたいその企画。私がコーディネートして…ゆーちゃんに着せる……完璧)

涼華は素早く人差し指を立てると言った。

「それ採用!」
「マジですか!!」

後輩は嬉しそうに破顔した。

「優秀な会計君には、この企画書を埋める権利をあげる」
「ありがとうございます、って俺がやるんですか!!」

涼華の言葉に、後輩の会計君はうなだれたが、涼華と話せたことが嬉しく、その顔は緩んでいた。

(今日はこれで帰れる♪ゆーちゃん、待っててくれてるかな)

涼華はカバンを掴むと、さっさと生徒会室を立ち去ろうとドアの前に立ち、

「それじゃあお疲れ!あっ、会計君。それ埋めたら先生に出しといて」

じゃ!と手をピシッと挙げ、どたばたと廊下を駆ける音が遠退いていく。

「超二次元的!見た見た!?絶対遊弥ちゃんを待たせてるのよ!」
「わかったわかった」

玲奈は騒ぎ始めた花の頭を一発叩き、ぼんやりとドアを見つめた。

(すっかり青春しちゃって…)








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