青い春に伸びる影
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ただ、君を
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最初は、自分にたとえ友人と呼べる存在が居なかったとしても、やっていける自信があったし、そうしていくしかないだろうという諦めの気持ちも持っていた。今までそうやって生活してきたし、過去には友人と呼ぶべき人たちも居たが、地元から離れて高校に通っているため、必然的に疎遠になっていった。新しい学校に行っても、結局また同じように喧嘩に明け暮れていては、呼び名は違えど、やはり妙な名前で呼ばれ、敬遠されてしまった。
自分は、こうして生きていくしかないんだ。
そう思いながら、半ば開き直っていたところに現れたのは、学校で最も美人だといわれている少女だった。
「ゆーちゃん」
今まで、野獣だとか兵器だとか呼ばれてきた自分を、可愛らしいあだ名で呼んで、抱き付いてきたり昼食を一緒に摂ったり、対等に接してくれた。
くすぐったくて、嬉しくて、でも何だか苦しくて、複雑な思いを抱いていた。
「遊弥の遊は、“ゆう”って読むでしょ?だから、ゆーちゃん」
そう言って笑った彼女は、やっぱり学校一の美女なんだと思った。
彼女のことだ、やはり異性からの好意も集まるだろうし、過去に何度も恋人という存在を持っていたのだろう。それについては何の疑問も持たない。
しかし、自分と恋人同士になりたい、と言ってきたときには、さすがに焦ってしまったし、首を傾げた。
デートと称して遊園地に行き、何故か観覧車でファーストキスを同性である彼女に捧げてしまった。けれど、それに嫌悪する自分は居なかった。
自分を恐がらずに、むしろ好意を持って接してくれる彼女。いつの間にか、彼女の隣が心地いいと思い始めている自分。
だからこそ、傷つけたくなかった。
誰かに傷つけられる彼女を見たくなかった。
もう、危ない事はしない、彼女を泣かせてはいけないと思っていたのに。
肌に感じる温かい雫は、きっと、彼女の──────………
「ゆーちゃん!」
遊弥の意識は、涼華の涙声と共に浮上した。
ぼんやりと視線を移せば、しゃくり上げながらこちらを見ている涼華と目が合う。
(また、泣いてる)
遊弥は頭の片隅で、そう思った。
「良かった、怪我は大したこと無いみたいだから。傷もそんなに深くないって」
涼華の隣で玲奈が冷静にそう話す。遊弥は、涼華の目元を撫でた。
「泣くなよ」
「………………っ、だ、って……」
涼華は一瞬驚いたように肩を震わせるが、すぐにまた嗚咽を漏らす。
「目、擦るな。腫れるから」
労るような口調の遊弥に、その場に居た生徒会メンバーは目を丸くしたが、やがて優しく微笑んだ。
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