青い春に伸びる影

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君が好きで、



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花は頭を抱えていた。

(どうしよう……!森くん誘って展示とか回りたいけど、本人の前じゃまともに喋れないし………)

教室の前で一人百面相をしていると、かき氷を手にした森が通りかかり、ひらひらと片手を上げ、近付いてきた。

「お、田邊!あれ、回んないのかー?」
「おへぃ!も、森くんっっ!?」

突然話し掛けられ、花は奇声を発しながら同時に赤面する。背の高い彼を見上げると、ニコニコとした爽やかな笑顔が目に映る。

「も、森くんは…?一人、なの?」

恐る恐る尋ねると、森は苦笑して頭を掻いた。

「さっきまで部活の連中と歩いてたんだが、かき氷買ってたら見失ってなー。田邊は?」
「わ、私も…さっき展示の係終わったばっかりなの」

花がしどろもどろになりながら答えていると、森はかき氷を口の中に掻き込んで、廊下のごみ箱に放ってから、ニッコリと笑った。

「じゃあさ、一緒に回らね?」
「……えっ」
「せっかくの学祭だろー?1人で歩くのってつまんないしょ」

どこ行くー?とマイペースに学祭のプログラムをめくる森に、花はドキドキしたまま顔を向ける。

(ラッキー!なんて二次元的な展開!)

内心はかなりガッツポーズだ。目の前を歩く広い背中を追うように、花も足を進めた。

………この様子を、廊下の壁に張りついて背後から見つめている怪しい人影が居た。

「うぉぉおナイス進展!森くん良いぞ!良いぞ森くん!」
「ちょっ、七海!静かにしてよ、バレちゃうでしょ」

ガッツポーズを決めながらわくわくした表情を浮かべる七海に、玲奈はたしなめるような口調で話し掛けた。実は、花の恋模様が気になり、影からそっと覗いていたのだった。
やはり同じ生徒会メンバーで、親友といっても過言ではない彼女の初恋を応援したいと思うのは当然だし、鈍い森のことだ、何も考えずに花を誘ったとも考えられる。油断は出来ないのだ。

「おっ、2年の展示に向かう模様!追いますか、隊長」
「誰が隊長よ。良いから行くわよ」
「いえっさ!」

七海は敬礼をして、玲奈の後ろを歩く。せかせかと小走りで、足音を極力立てないように気を遣っているところが何処か間抜けで面白い。

「あれれー?あそこに見えるのは金城兄妹と遊弥ちゃんだ」
「……あの二人、兄妹だからって好きな人のタイプも似たんじゃないでしょうね」
「……確かに、遊弥ちゃん両手塞がってるっぽいよ」

右手を涼華、左手を温樹にしっかりと握られており、確かに遊弥は窮屈そうだった。

「いいねいいねー、青春って感じだなぁ」

しみじみと言いながら微笑む七海は、少し年寄り臭いと玲奈は思う。

「ほら、最後の学祭なんだから、少しくらい私達も楽しみましょうよ」
「お嬢おごってー!」

親友の恋を応援し隊の二人は、仲良く廊下を駆けていくのだった。




たまにはこんな目線のお話
(田邊ー、景品取ったど!俺は要らんから、やる)
(森くんからプレゼント…!!)




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密かに花の恋を応援したい←






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