青い春に伸びる影

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見上げた横顔が、



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「ほらほらっ、花火始まっちゃうよ」

涼華はぐいぐいと遊弥の手を引き、人込みを縫って歩く。
賑やかだった学校祭の一般公開が終わり、残すところは後夜祭となった。メインは巨額の予算を注ぎ込んだ花火大会で、高校とは思えないほどの規模を誇り、毎年恒例の地域行事になりつつある。

「穴場があるんだ、今から行こう」

ふたりきりで見たいじゃん、と涼華は一人呟いて、屋上に迎う生徒達とは逆に、どんどん階段を下りて、外に出てしまう。

「屋上じゃねーのかよ?」
「屋上よりも人が少なくて、ゆっくりきれいな花火が見れる場所があるの」

不思議そうに首を傾げる遊弥に、涼華はウインクする。涼華の性格を知ったからなのか、遊弥がそれ以上口を開く事はなく、黙って手を引かれるままだ。

学校の裏に回って、非常階段を上がると、屋上よりもやや低いが、空を一望できる場所があった。近くに高い建物もなく、見上げると夜空をぐるりと360度見渡すことができた。街灯も少ないためか、ちらちらと星が見える。

「こんなとこ、あったんだ…」

思わず呟いた遊弥に、涼華は小さく笑った。

「良いでしょ。意外と知られてないし、実は生徒会のみんなにも内緒にしてたの。私の秘密の場所。何かあるたびにここに来てたんだよ」
「……良いのかよ。アタシに知られて」

遊弥は訝しげに言う。涼華は遊弥の手を取り、頷いた。

「ゆーちゃんだから良いんだよ。今からここは、私とゆーちゃんの秘密の場所」

遊弥は目を見開く。親友とも呼ぶべき生徒会メンバーに秘密にしていることを、まさか自分に教えようとするとは。

「……金城、」
「なに?」

遊弥の呼び掛けに振り向いた瞬間、花火が高々と空に上がった。遊弥の唇がわずかに動いていたが、うまく聞き取れない。

「ねぇ、ごめん、聞こえなかった!」

少し声を張り上げ、涼華はもう一度聞き返す。
しかし、遊弥はそっぽを向いた。

「一回しか言わねーよ」
「何それーっ」

しかし、そうは言いながらも涼華の表情は嬉しそうだ。花火は止むことなく上がり続けていた。






赤く見えるのは花火のせい
(照れ屋さんなんだから)
(ありがとうなんて、今更すぎて言えねーよ)



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少し縮まった二人です。早く進展しろ!(笑)






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