青い春に伸びる影

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たまには本気出すよ



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気が付くと夏は終わりを告げていて、緑だった木々も色とりどりに染まって、秋の訪れを感じた。少し肌寒い空気に、たまらず学生たちはブレザーの下にセーターを着込む。

「急に寒くなったね。ほら、私が暖めてあげる」
「なっ……お前の方が冷てぇだろうが」

相変わらず遊弥大好きな涼華は、通学を共にする中で手を繋ぎたい気持ちを全面に押し出した。冷え性のために冷えた指先を見兼ねた遊弥が、文句を言いながらも結局は涼華の手を取ることを知っているからだ。

「おっはよう、お二人さん!朝からラッブラブだねぇっ」

後ろから七海と花が二人をつつく。嬉しそうにのろけモードに入りそうになる涼華を、遊弥は必死で止めようとした。そんな様子を見て笑いながら、七海はふと思い出したように言った。

「そーいや、もうすぐスポ大じゃん。今年最後だけど、涼華はバスケ出るの?」
「補欠で良いよ、別に。動くの怠いし」
「ふーん、勿体ない」

冷めた様子で答える涼華に、七海は口を尖らせた。



教室では、球技大会に向けてメンバーの選出が行われていた。学級委員が黒板の前に立ち、屋内でバスケットボール、バレーボール、グラウンドではソフトボールとサッカーが行われることを説明した。

「野獣が居るなら勝てるよ、うちのクラス。負け無しじゃん」
「じゃあ葉月さんは全部出場で良いの?」
「オッケーでーす!」

毎年の光景だが、運動神経抜群の遊弥は、否応なしに全ての競技に参加させられてしまう。周りが盛り上がってしまうため、拒否するタイミングを失って結局3年経ってしまった。
何も言わずに黒板を見つめる遊弥の横顔を見ながら、涼華は不機嫌そうに溜息を吐いた。

「ゆーちゃん」
「……んだよ」
「んだよ、じゃないでしょ。何で断らないのさ。無茶に決まってんじゃん、全種目出場なんて」
「毎年のことだから気にすんな。アタシが頑丈だってことは知ってんだろ」
「……………」

涼華はムッスリと口を尖らせて、「ゆーちゃんのばか」と呟いた。






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