青い春に伸びる影

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ずっとずっと大好きだよ




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「あっという間に冬休みかー。高校生で居られるのも、あと少しなんだな〜…」

終業式を終えたその日に、七海が染々と言った。玲奈や花も頷きながら鞄に物を詰めていく。

「冬休みが明けたら、あとはもう卒業に向けてまっしぐらじゃない?進路が決まった子も居るし…」

玲奈は寂しそうに言った。大学へ進学する者は勉強に大忙しだ。七海や玲奈は、生徒会での活躍と成績の優秀さが認められ、高ランクの大学に推薦入学が決まっている。

「あの二人も、そろそろくっついちゃえば良いんだけどな…」

花は学校一の美少女と、その恋の相手の顔を思い浮かべる。卒業は間近に迫っているのだ。離れ離れになる前に、決着がつけば良いのだが。その呟きを拾った七海がふふんと目を細める。

「なーに言ってんのよ〜?花こそ、森くんとはどうな訳?」
「ひぎぃぃっ、それ聞いちゃう!?」

わははは、とその場に笑いが響いた。



「ゆーちゃん!一緒に帰ろ♪」

ぎゅう、と腰の部分に人が巻き付いてきた。遊弥は慣れたもので、最近では軽くあしらうようにしている。

「わかったから離れろ」
「わーい!」

振り向くと満面の笑みでこちらを見返す涼華と目があった。それを見ると、何だか体の毒気を抜かれたような気分になる。彼女に出会ったから、自分はここまで丸くなれたのではないかと思う。

「ねぇねぇ、冬休みはどうするの?何処か旅行に行ったりとかする?あ、帰省とか?」
「ああ………、いや、別に。精々バイトくらいかな」

捲し立てるように尋ねてくる涼華に、遊弥は至極冷静に答えた。冬休みは、特に何も予定は無い。ただ、綾音のことが気掛かりだった。

(あいつ、帰省したがってたな…)

喧嘩ばかりで荒んでいた遊弥とは違い、綾音は親から可愛がられている。当然、長い休みは故郷へ帰っていた。

「じゃあさ、じゃあさ!私と何処か行こうよ。いつも日帰りだったけどさ、今回は泊まりで。冬休み明けたら、もうこうして遊ぶのも難しくなっちゃうでしょ?」

涼華のその言葉を聞いて、遊弥はパタリと動きを止めた。そうか、卒業式が近付いてきてるんだ。いつまでもこのモラトリアム期間を過ごすことは出来ない。遊弥はバイト先のカフェに正式に就職することが決まっている。

(金城は……確か……)

この地を離れ、大学に進学するはずだ。かなりレベルの高い、有名な大学だった気がする。

「思い出作りしようよ。ね?」

にこ、と美しい笑顔。
遊弥は迷わず頷いた。

たかが高校生の財力だ。あまり遠くには行けないので、電車で移動でき、かつ「旅行に行った」感がある場所に行くことにした。例えるなら、小学校の時の修学旅行を思い出すような感じである。

「夜光バスで帰ってくれば、電車より少しは安いよ」
「なるほどな」

二人は計画を練っていく。涼華の家にお邪魔した日は、大抵温樹がアドバイスという名のちょっかいをかけてきたが、涼華が妹パワーを発揮して部屋から追い出していた。

「俺も一緒に行きたいなあ」
「だめー!ゆーちゃんとのラブラブ旅行プランなんだから」

そんな美男美女兄妹を見ていると、微笑ましい気持ちになる。温樹はちぇーっと口を尖らせているが、何処か嬉しそうだ。

(ちゃんと好きな人ができて良かったな〜…)

愛する妹の彼氏を格付けしてきて何年経ったかは忘れたが、こうして本気の恋をすることが出来て、長年見守ってきた甲斐があったというものである。

「ま、俺も研究室の卒業旅行があるからね」
「じゃあそっち行けば良いのよ。ゆーちゃんはだめー!」

楽しそうな会話が部屋で繰り広げられていた。

「写真一杯撮って、お土産も沢山買って…それから…」

指折り数えながら、涼華は微笑む。

「ゆーちゃんと思い出作る!」






君との思い出、プライスレス
(何事にも代えがたい)




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次はラブラブ旅行編です。完結が近付いてきたような気がしています。







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